神様、あの人と同じ傘に入る勇気をください。

まるで月9ドラマのような出会いから始まる、純愛ストーリー。
見知らぬ二人が偶然に傘の貸し借りをするという導入部は実に自然で、すっと物語の中に入っていけます。

このお話に、特殊な設定や奇をてらった演出はありません。
どこにでもいるアラサー女子の、どこにでもあるような恋の話。
ですが、丁寧な心理描写が、そんな「普通の」恋心に深い共感を呼び起こすのです。

出会ったばかりの隼人に好意を抱きつつも、過去の恋愛でひどく傷付いた主人公の美穂は、どうしても臆病になってしまいます。
想いを通じ合わせても、また裏切られるかも知れない。
また辛い想いをするくらいなら、初めから諦めた方がいい。
文字を追いながら、美穂と苦しい心境を共有しているかのような気分になりました。

上手いなと思うのは、メッセージアプリの使い方。
しつこく連絡してくる元カレのメッセージに『既読』を付けないようにしたり。
隼人に送ったメッセージにすぐ『既読』が付いて、まさに今この瞬間、彼と同じ画面を見ていることを実感したり。
すごくリアルです。もうそんな機会もない(多分)私ですが、今から恋愛をするなら、きっと同じようにこの『既読』で一喜一憂するんだろうなと思います。

美穂の視点を通して見た隼人が、本当に素敵で。まるで読者自身も隼人への想いに揺らいでいるかのように感じられます。
心の中で全力で美穂を応援しつつ、この恋の行く末を見守りたいと思います。

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