エピローグ

 私は里の英雄になった。220年に渡る因縁に決着をつけた者として。


 今、私は軍の魔術師として活動している。仕事は忙しいけれど、月に一回は必ず休暇を取り、里に帰ることにしている。森の出口の、大きな切り株近くにある、小さな手作り墓の手入れをするためだ。


 墓標は入れていない。何かの拍子に里の人が見つけたら、悪趣味なイタズラとして片付けられてしまうだろうから。


 私はその墓に、様々なことを話す。仕事のこと、日常のこと、人には言えない悩み事まで。彼が私の聞いたことに一々答えてくれたように、真面目な顔をして。


 柔らかな光がいつも降り注いでいる森の出口で、私は墓の手入れをしている。


………


「ねえ、おねえちゃん!」


「なあに?」


「おねえちゃんはどこの人なの?」


「この谷から出たところにある森に住んでいるの」


「なんでおねえちゃんの耳は長いの?」


「生まれつきこうなっているのよ」


「おねえちゃんはどうしてそんなに背が高いの?」


「これも生まれつき背が高くなるようになってるの。あなたと同じくらいの時には、あなたとそれほど変わらなかったわ」


「なんでおねえちゃんは、ぼくたちしか知らないおまじないを知ってるの?」


「昔、私の大事な人に教わったの」


「おねえちゃんはここで何をしているの?」


「お墓の手入れをしているの」


「だれのお墓?」


「優しくて素敵なオークのお墓よ」


「なんでおねえちゃんは泣いてるの?」


「あなたが、私の大事な人にそっくりだからよ」

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あるエルフの追憶 @HAO

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