執筆に欠かせない!

発条璃々

相変わらず、アコはラブラブなようです。

「なあなあ、アコちゃん」

「なあに、トモエ」

 黙々と課題を解きながら、アコは背後のトモエに返事をする。

 トモエは、何しに来たのか、アコのベッドでうつ伏せになり、お菓子を食べては漫画雑誌のページを捲っている。

 明らかに、勉強の邪魔である。


「アコちゃんてさ、最近よく書いてるじゃん。面白いの?」

「面白いよ。色んな作品も読めるし、読んでくれる人がいるだけでまた書こうって思える」

「ふーん。そんなもんなんだ。で、最近彼氏とはどうなの?」

「それ、前フリと関係ないよね」

「えー、気になってお腹いっぱい食べられない」

 トモエの側には空になったお菓子の袋が散乱している。

 アコは振り返ってジト目をマユミにぶつけつつも、

「仲良くやってるよ。だから未だに片思いしてても無駄だから」

「アタイは別にっ!誰が、片思いなんかっ!」

 訂正してもらおうと、ベッドに凭れている未だ声すら発していないマユミを見やる。


「……何してんの?」


 マユミはアコのMacBookを借りてずっと唸っている。

 トモエは体を起こして、マユミの横に座り画面を見つめる。

 どうやら、触発? されたのか、マユミも何かを書こうとして、詰まっているようだった。

「ねえ、アコ」

「なあに、マユミ」

「アコは、執筆するとき、欠かせないものってある?」

 ひと段落ついたのか、アコは一度大きく伸びをしてノートを閉じる。

「わたしの場合だと、好きな音楽……と言いたい所だけど、書いているときは無音に近い方がいいかな。だから外で執筆する場合は、ヘッドフォンをつける」

 そう言って、トモエとは反対側に腰を下ろす。

 ふと、普段とは違う香りがした。

 そういえば前に、彼氏が好きな柑橘系に替えたって言ってたのを思い出す。

 アコの横顔を静かに眺めながら、マユミは少し胸がチクりとしたのを誤魔化した。

「あとは? 他に何か使ってたりするの?」

「そうだね。あとはこれかな」

 滑らかな手つきで、マウスを操作してアコはひとつのアプリを立ち上げる。

「『Olivine Editor』?」

「そそ。今は開発が停止してて更新されていないんだけど、使いやすいアウトラインプロセッサ。ツリー表示もできるし日本語対応だしね」

「なるほどね。私も使ってみようかな」

「ところでさ、アクセス数はどうなの?」

 聞かれたくなかったのか一瞬、沈黙の後に取り繕うような笑顔をアコは向ける。

 トモエは公開されているアコの作品に目を通してみた。


「これ、延々とこんななの?」


 アコの作品は、どれも彼氏とのイチャラブを綴っている。更にオチもない為、読んでてイタイ内容だった。



 ✳︎


 掌編仕立てに綴ってみましたが、

 彼女らが言ったことと他には私の場合ですと、

 1、無音の状態でできるだけ書く。

 2、煮詰まったら適度に体を動かす。

 3、疲れたら風呂に入る。

 4、甘いものを食べる。

 5、好きな本を再読する。

 でしょうか。

 最近は、ちゃんとしたプロットを作成せず勢いで書き始めて、

 後から再構成する際、Olivine Editorを使用しています。

 他の使いやすいものもあるとは思うのですが、どうも慣れているので。

 外出先で、アイディアが浮かんだときは、スマホのメモなどにまとめています。

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執筆に欠かせない! 発条璃々 @naKo_Kanagi885

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