『死にたい』と言う君に…
「死にたい…もう、やだぁ…」
「はぁ…今日はなに?」
学校が終わり、人のいなくなった教室に残ってるのは、私たち2人だけだ。
『死にたい』そう言いながら机に突っ伏すコイツ…サナを見るのはもう日常茶飯事だ。
「西田くんにね、Aクラスの女の子が告ったんだってぇ…もう、私に勝ち目なんかないんだぁ…」
またか。
三カ月前は同じクラスの頭のいい男の子。
先月は去年同じクラスだった、無口で色白な男の子。
まぁ、運命の恋が多いやつだよ。
「負けたとか言う前にあんたも告ればいいんだよ」
「だって可愛くもなくて、こんなにめんどくさい女西田くんがOKしてくれるわけないもん…」
そんなめんどくさいところも、あんたの個性でしょ。
可愛くないなんてことない。少しニキビができた顔も、見た目のわりにハスキーな声も、全部、かわいいんだよ。
そんな私の気持ちなんてなにも知らないサナは机に突っ伏したままだ。
「はぁ…諦めるなら諦める。諦めないなら、諦めないでハッキリしな」
「シノちゃん、冷たい…」
私は、あんたが泣くのがやなんだよ。
いつだって、笑顔でいてほしいんだ。
なのに、あんたは死にたいだの、もうやだだの、そんなことばっか言う。
「もう、死にたい…」
聞きたくない。
私は、サナに生きてほしい。
それでも、死にたいって言うんなら…
「じゃあ、殺してあげるよ」
あなたの人生の終わりを、私がしてあげるよ。
私の言葉に驚いたように顔を上げたサナ。
「そんなに死にたいなら、私が殺してあげる」
サナの白い首に手を伸ばして、手を絡める。
あなたの最後の記憶に私が残るのなら、あなたが最後に考えるのが怒りであれなんであれ、私であるなら、私はあんたを殺してあげるよ。
「シノ、ちゃん…?」
驚いた顔。目を見開いて、ジッと私のことを見つめている。
「なーんてね。じょーだんだよ。冗談。あんまりあんたがめんどくさいから、一回死んだら、そのめんどくささがなくなるかと思って」
やっぱり、私にサナは殺さないや。
誤魔化すように、ケラケラ笑って、首から手を離す。
「なぁんだ!びっくりしたぁぁぁ…迫真の演技なんだもん!シノちゃん女優になれるよ!」
息を大きく吐いてサナは心底驚いたように笑い出した。
「あーはいはい。ありがと。じゃ、私もう帰るわ」
「あ、待って!私も帰る!」
今度、またサナが死にたいって言うなら…
今度こそ『死にたい』と言う君の首に手を回すよ。
甘く切なく、時に苦しく、時に涙し。 紫苑 綴 @Tuzuri_Kaminagi
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