あなたに名前を

「……久しぶり」


「ってほどでも、無いか……でも、随分待たせちゃったな」


「今更、許されるとは思ってないよ……それだけの事を、僕は君にしたと思ってる」


「……みんなを傷つけないために遠ざけた、自分がこれ以上傷つかないように、倉庫の奥へと押し込んだ」


「都合のいい時だけ、引っ張りだしちゃったな」


「あれから、ずっと考えてたんだ。逃げる為じゃなくて、向き合うために」



「……馬鹿だよな、本当は答えなんて、ずっと前から転がってたのに」


「セフィナは、毒の魔剣を薬として使った」


「ノノは、警戒を解く力でみんなと仲良くしようとしてる」


「──そしてなにより、僕自身が。音で攻撃するウルムケイトの声の魔剣を、話すために使ってる」



「特異性の使い方なんて、人それぞれなんだ。僕が、意識的に……ああいう使い方をした、昔一度起こったことの通りに」


「……今度さ、弟子に剣を作ってやるんだ。最高の一振を」


「虫がいい話だろ、お前を使おうとも思えなかった人間が、だ」


「憎まれて当然だ、そういうことをしたと思う──それでも、もし君がまだ、僕を許してくれるつもりなら」



「名前を、考えてきたんだ。セフィナやノノと一緒に……聞いてくれるか?」

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少女と小さな魔剣譚 響華 @kyoka_norun

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