大樹に集う

余命3カ月と申告されてら30年が過ぎていた




彼女は新しい場所に行く前に一度研究所に行くことにした

ずいぶん時間がたち、病気を治す方法が見つかっているかもしれない


研究所は施設も人も様変わりをしていた


今もいるのは、すっかり歳をとった女性研究者

髪の毛はきれいに白くなっていた


始めて出会ったのは、まこが10歳の時、

そこに優秀な新人女性研究者が配属されてきた


『もう研究の第一線は離れた、今はあなたの心配をし過ごすのが仕事』

と話してくれた


そして優秀な女性医師を紹介してくれた

まこはこの年配の女性医師は、自分の知り合いだと感じた

医師はまこの小学校のクラスメイトだと明かしてくれたので

2人は懐かしくなった



あらかじめ医師には病状は伝えられていた

そして、今の医学では治せないもう少し待ってほしいと、まこは説明を受けた

時間は惜しい、すぐに見たことのない最新機器で一通りの検査をした

体内のサンプリングもすみやかに行われた



まこは医師に、30年後、長生きしてまた診察してほしいと伝えてた

研究所をを去ろうとしたとき

医師は少し時間がほしいと言って、まこを中庭に連れていった


そこには、懐かしい顔ぶれが集まっていた

小学生、中学生、高校生の時の同級生がいた

警察学校、警察署の同僚たちもみんな彼女のためにやってきた


まこの到着に歓声が沸き上がった

もうおばあちゃん、おじいちゃんばかりだ

髪の毛は白くなり、しわだらけの笑顔


まこは30年前のまま、30歳の姿のまま


みなが羨ましいと口をそろえる


家族や孫を連れている人もおり

まこにはそれが羨ましいと感じた



夜遅くまで、話をした

次の日の朝、研究所をあとにした





海が見える丘の上で木になる

風は強いが周りに大きな木がなく日当たりがいい

遠くの天気も、近くの町の様子も良く見える




人が来ないような丘のうえに

女性研究者がやって来た

高齢の女性には容易なことではなかったし

研究所の外に、まこに会いに来るのは初めての事だった



話を聞いて欲しいと言う



『まこが病気になることは判っていた

 病気の原因は子供の頃の実験せいだと

 本当に申し訳ない

 みんな本当にすまないとおもっている

 どうか許してほしい

 みんな、あなたが幸せになれるように本当に考えていた』



樫の木は何も言わなかった



女性研究者が泣きながら帰ろうとした時

まこの声が聞こえてきた




『知っていました

 木になっていると、色んな事を聞いてしまいます』


『みんなやさしくしてくれた

 私は幸せものです』




研究者の女は泣きながら話した

『必ず治す方法を探す

 待っいて欲しい

 連絡する

 私がいなくなっても、心配はいらない

 必ずあなたを見守るように続けていく』




まこは少し泣いた





それからまた、樫の木になって過ごした


何十年かたった

洋上の雷雲をながめたり

やってくるリスをみつけて楽しんだ


静かに過ごす


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