恋する樫の木

この話の冒頭で、まこに告白した不運な男


研究所で身辺調査が行われた

そしてその結果として、

この男は、年齢相応で健康であると結論が出た





高校はいろいろな中学校から、集まってくる

彼女の事情を知る人、知らない人

ただ多くの生徒が彼女を慕っている様子を見てか

彼女を好きになる人間は多いようだ




彼女はまた校舎の裏にいた


告白を受けている

別の男だ


『ああ、だせぇ』

男はそう言って、木に手をついてうつむいた

やっぱり樫の木だった


手には、黒いグローブをしていた

学校の生徒の中に、そんな奴は他にいない




すぐに、彼も研究所によって調査が行われた

反社会的な音楽をたまに聴くが、年齢相応で健康的だという結論がでた




年配の研究者が言った

『こういう場合は、次はどうなるんだ

 どっちが好きなんだ』



若い女性研究者は言った

『どっちも好きなんでしょう

 木になっています』



中年の男性研究者が言った

『二人とも説明する必要があります

 そして後は3人に任せるという事でどうでしょうか』


『それから、すべての高校の関係者にも協力をもらえるように調整が出来ました

 もう協力いただいている人もいますが

 こちらについても、一度集まっていただきましょう』



関西出身の研究者が言った

『今度の奴はイケメンやな、

 でもあの手袋は痛いわ、超ダサいな』





学校に研究所の所員がやってきた

まこに告白した彼ら2人に事情を説明するためだ



若い女性研究者によって説明は行われた

『まず、彼女の親は、実の親ではありません

 これは彼女も知っています

 配慮の方をお願いします

 実の親についての詮索等は、配慮の欠ける行動になります』


『彼女は木になります

 感情が高ぶった時に自分の意思に反して、木になってしまいます

 自らの意思で木になる事もできます

 木の時に五感はあります、しっかり見えていますし聞こえています


『木になっている間

 元の人の体の時間は止まっています

 おなかも空かないし、歳もとりません』


『彼女は服や数kg程度の荷物と一緒に木になります

 人に戻る時、持っていた服、荷物はそのままです

 彼女は時計を常に身に着けています

 これはただの時計ではなく、彼女の位置・状態がわかります

 木になると通信が途絶えたるため

 私達は木になっている状態だと判断します

 前後の行動を分析・判断して現場に行く場合があります』


『彼女がなる木の種類は樫の木です

 どんぐりの実をつける事で有名です

 彼女のどんぐりが木から落ち、一旦彼女から離れると

 木が彼女に戻っても、どんぐりはそのままです

 私達はこの事を『木の実木のまま』と呼んでいます』


『記録は取らないで

 内容は記憶してください』



こんな感じで、彼らへの説明は行われた




次の日

2人の男は別々に研究所に現れた

彼女への気持ちは変わらないという旨を伝えて署名していった



常に黒いグローブをつけている男の名前は亮平という

彼は、放課後彼女と話す場を設けて思いをもう一度伝えた



最初に告白した優しそうな男は名前を壮太という

彼も休み時間に彼女をよんで、やはり思いをもう一度伝えた

そして、休みの日に遊びに行く約束を取り付けた



彼女は彼らの告白に対して

2人の事がまだよくわからない少し時間が欲しいと答えた




休みの日に、まこと壮太は遊園地へ行った


昨日のテレビ番組の話をしていると

肩がぶつかり指が触れた

壮太が横を見ると愛する女性が、木の姿に変わっていた


遊園地、樫の街路樹の日陰で休む

周りの人は、樫の木を気にする様子はない

木になるのは、自分の事が好きだという事なのでで嬉しい

ジュースを買って戻ってくると

樫の木は無くなり、彼女はベンチに座っていた


壮太はお化け屋敷と観覧車はやめておこうとまこに声をかけた



壮太は帰り道の公園で、付き合って欲しい伝えた


まこはそれを了承した



それから、2人は何度かデートを重ねていくことになる




ところが


次の週の休み

まこは亮平といた



彼は彼女に訴えた

自分の事はまだ知ってもらってない

チャンスが欲しい


亮平はイケメンだった


亮平はマックで音楽の事を話してくれた

彼女には何のことかわからないが

楽しいと感じた


そして、彼女は悩むのであった





そんなおりに

痴漢の事件はおこった

みなの助けもあり一件落着するものの


多くの人間に手をあげたことに

自制するように、強く言われた


これには、身を守るためだと反論したが

今後は助けを求めるように言われた

彼女が反論するのは珍しい





秋になり運動会があった

まこは運動は得意だった


彼女の活躍と共にスケジュールは進行する

しかし、問題はフォークダンスの演目で起こった


輪になって踊っている

その途中でまこは木になってしまった


流れの中で大きな樫の木が発生したために

ドミノ式に後続が、ぶつかる、ぶつかる



父兄は録画中のビデオカメラを止めた


『まこちゃんはあの男の子が好きなんやね、

 皆にバレてしまうのはかわいそうやけど、かわいいな

 あの男の子とは確か付き合っているんやね』

『いや、あの男の子は、それと違う子』

それは、亮平でもなかった、壮太でもない

そして、みんなが波乱を予感した



それから校舎の裏で

壮太とまこは話をした


まこはこの性質が嫌になった




それからしばらくして

まこは電車で壮太を見つけた


しかし、それはいつもの様子と異なっていた


壮太はクラスの女子と話をしている

仲が良さそうだ

2人が手をつないだので

まこは駆け寄った


『どういうつもりだ』

手を放せと、まこは言った


『いやだと言う』

壮太はまこに逆らった


そして、隣の女が教えてくれたと、壮太は言う

まこが亮平と、ちょくちょく遊びに行っている事と

野球部の男ともラインの交換をしてやり取りをしている事を


『いい加減にしろ』

壮太は言った


隣の女は大きなおっぱいを壮太につけた

そして言った

『いろんな、男に手を出すのはいいけど、壮太を巻き込まないで』

まこは女にビンタした

女はひるまず続けた

『みんな好きで、あなたと一緒にいるわけじゃない

 あなたといると、研究所から補助としてお金がもらえるの

 いい加減にしなさい』

女はまこをビンタした

つかみ合いの喧嘩が始まったが、

壮太が間に入る前に、まこは木になった


木になる前、まこが泣いているのが壮太は見えた


電車の車内に緑の葉が生い茂る

車両の下の方から変な音が聞こえる

木の根は堅い電車の床に穴をあけていた


壮太も女も、車両内に広がる樫の木のせいで窓がわに押し付けられている

他の乗客も、同じようなもの

この状況は、1分程度では戻らなと、壮太は感じていた



電車は緊急停車したが、

白い煙を出している

消防、救急が出動し

報道も来るにいたった


メディアはこの出来事を大きく取り上げた





次の日

まこは研究所にいた

よく知る若い女の研究者がやってきていくつか話した

今はゆっくり休んでほしい

家族のことは心配しなくていい

あなたが悪いのではない



その次の日

まこは迷惑をかけた事を謝った



それから数日間

まこはゆっくり時間を過ごして

研究所のみんなと一緒に、これからについて話し合いを重ねた



まこは研究所の病院で

普通に生活をするためのトレーニングを始める事が決まった


彼女は、所員が集まる前で

頑張りますと言って意気込みを伝えた




若い医師は話す

『この性質と付き合っていくのは大変だと思う

 コントロールする方法は必ずあります

 一緒に頑張っていきましょう』


頑張りますといって

まこは木になってしまった


医師はなかなかイケメンであった





所員一同、みんな同情した


彼女の意気込みは確かに本物であった、

彼女が悪いわけではない

これは仕方がない事なのだ




彼女は学校を休学し

しばらく研究所で過ごした

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