思い出の修学旅行
小学校の授業でパンジーを植えることになった
スコップとパンジーがクラスメイトに配られた
そんな中、クラスのみんなにある考えが浮かぶ
木になれるまこなら、
不思議な力で植物と会話できるんじゃないだろうか
クラスの男の子が彼女に聞いた
『パンジーってどんな気持ちなんだろう』
そういう意図からでた質問であった
まこの答えに注目が集まるが、
彼女はそんなの分からないと、答えるだけだった
彼女は植物になれても、植物と話せるわけでもなく
植物に詳しいわけでもなかった
ただ、木のようにじっとそこに居るという事がどういう事なのかは分かっていた
木になれば、疲れる事もなくストレスもない
足は元々、棒になっている
気持ちも穏やかなものである
彼女は授業を通してパンジーの植え方を知り
みなの期待に応えるべく、植物のことに少し関心を持つようになった
小学校六年生になったころ、まこが修学旅行へ行くか行かないかが問題になった
知らない土地で木になり、多くの注目を集めるのは困るというものである
本人は、行けなくても仕方がないと考えていた
人と違うスケジュールには慣れていた
しかし、クラスの中で彼女を修学旅行に連れて行こうというムードが高まり
先生に直談判に行くという事態に発展した
先生はその行動に感動し、
なんとか修学旅行に行かせてあげられないか行動を始めた
研究所でも行かせてあげようというのが大半の意見
普通の経験をさせてあげたい
一瞬で木なるその様子は、注視して見ないと中々人は気付かないという事
そして、ここ最近はほとんど木になっていないという事が元になっている
ただし、旅行先は研究所の所員がみんなで駆け付けれる東京になった
修学旅行へまこが参加するという連絡ははクラスメイトを歓喜させた
さっそく、木になった場合の対策方法がホームルームで議論された
バスから降り立った東京の町は
修学旅行生にとって、刺激で溢れていた
立体的に交差する道路
見上げるばかりの建物
そして、東京タワーからみる眺め
クラスメイトは、自分が目を奪われるたびに、まこの心配をした
彼女はいつ木になってもおかしくない
周りはハラハラした
木になったときの手順を頭にうかべた
しかし、心配をよそに彼女は落ち着いたものであった
この小学生は都会人のような雰囲気さえだす
街の風景と目を輝かせているクラスメイトを余裕で眺める
そこには理由があった。
実は彼女は先週の休み東京にいた
修学旅行の予行演習
研究所の所員と一緒に原宿でクレープをたべ
東京タワーにも登っていた
彼女にとって、2回目の修学旅行であった
この日のまこは、絶好調であった
そのうちにバスガイドの真似をし始めた
右手に、左手にと見えるものを説明する
しかし、修学旅行とは想定外の事が起こるものである
それは一瞬の出来事であった
それは原宿観光からバスに戻ろうかという時
彼女は木になってしまった
幸い街路樹の近くで、比較的景色には溶け込んでいた
とは言っても、樫の木の根は、道に力強く穴を空けている
近くにいたクラスメイトが木を囲んだ、
これが決まっている最初の手順
一人の生徒が、木を移そうかとスコップを取り出したが
町の風景にさほど違和感がないため必要ないという事になった
先生は慌ててやって来た
『なぜ木になったの』
まこの最も仲のいい女の子が
木になった理由を説明する
まこの好きなお笑い芸人がいたのだという
まこは1分ほどすると、小学生に戻り
『ごめん』と一言
そして、バスの中でもう一度
クラスメイトに、ごめんと頭を下げるのだった
それから、お笑い芸人のバッファロー五浪について話し出すのであった
『私は、誰がなんといおうと一番面白いと思っている』
みんな彼女の話を聞くのが好きだった
彼女は修学旅行で東京が好きになった
原宿の道路に空いた穴には、パンジーが植えられている
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