シマヘビ

 5月末。運動会の振替休日で家にいた子どもたちに、田んぼの補植を手伝ってもらう約束をした。

 それなのに、出発する時間になってもテレビにかじりついているので、もういいや、一人でやろうっと置いていった。


 田んぼまで車で15分。

 さあ、作業を始めようとしたところに電話がかかってきて、「ごめんなさい~!」と。

 でも、もう戻るのもめんどくさいので、「手伝う気があるなら走っておいで」と言ったら、ホントにやってきた。

 4キロくらいあるのに!

 なのでやる気満々なのかと思いきや、真面目にやってるのはやっぱりほんの短時間……。

 ま、こんなもんでしょーね。

 来ただけでも偉い偉い。

 やって来たのは次男と三男。手伝いもそこそこに、おたまじゃくしやかえるを捕まえて遊び始めるのは毎年のこと。


 しばらく一人で黙々と作業をして、腰が痛くなり、うん~っと背中を伸ばした。その時

ふと水面におかしな波紋が動いているのが目についた。

 アメンボのように丸い波紋でもなく、おたまやかえるのようにすいっすいっと進む感じでもない。す~っと緩やかにカーブを描きながら進む波紋。

 よく見ると、波紋の真ん中から5センチくらい鎌首をもたげたヘビが、悠々と泳いでいる!!


「うわっ! ヘビ!!」


 思わず大声を出すと、近くにいた次男がひょいっと頭を捕まえてぶらさげた!


「これって毒あるん?」


 って、捕まえてから訊くか!? 手を出す前に訊かなきゃ!


 でもまぁ、頭を捕まえてるから今のところ噛まれる心配はない。気持ち悪いけど見せてもらい検索してみると、それはシマヘビで毒は無さそうだ。噛まれたら普通に痛いだろうけど。


 そう伝えると、


「飼いたい!」


 って、え!? ヘビを?


 確かに爬虫類をペットにしてる人もいるけど……。ちょっと遠慮したい。きっと君たちは「あ、逃げた」とか軽く言って家の中で逃がしちゃったりするだろうから。

 そう考えて却下する。


「じゃあ帰るまでだけ遊んでいい?」


「そりゃかまわないけど……」


 ヘビにとったら災難だな。可哀想に。



 それから一時間ほど作業を続けて休憩することにした。


「休憩しよーかー。お茶にするよー」


 一緒に作業している仲間に声をかけると、子どもたちも駆け寄ってくる。


「君たち休憩しなきゃいけないほど作業してないじゃん」


 冗談めかして言い、次男を見て絶句。


 え? それはちょっとさすがに……! 確かに帰るまで遊ぶとは言ってたけど。そこまでやるのか!


 この一時間でずいぶん仲良くなったようで、タオルのように首に引っかけたヘビのしっぽ側はTシャツの中に入っている。そして見ている間にも次男の頭上へするりと這い上がって、顔の真ん中から降りてくる。


 確かにね、テレビとかでは見たことあるけどさ。ニシキヘビとか首に巻いてる人とかね。でもまさか自分の息子がここまでやるとは思わなかったよ。



 子どもたちの好奇心の旺盛さと、大胆さには毎度驚かされます。

 

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6人姉弟のハチャメチャな日常的 2 楠秋生 @yunikon

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