電気工事

 始まりは、部屋の電気のスイッチだった。

 パチンパチンと切り替えても、間に何か挟まっているような感じで、電気がうまく点いたり点かなかったりして、使い勝手が悪くなっていたスイッチ。やんちゃな男の子たちが乱暴に扱うから、なんでも傷むのが早い。

 しばらくはそのまま使っていたけれど、あちこちのスイッチがおかしくなってきてので、電気屋さんに来てもらった。

 

 電気屋さんが道具を出して作業を始めると、4人のやんちゃボーイズが集まってきて、興味津々でのぞきこむ。


 ……やりにくいだろうなぁ。


「邪魔しちゃダメだよ!」

「はーい」

「うん!」

「わかった!」

「わかってるって」


 それぞれ返事はいいけど、そんなに近くで見てるだけで邪魔だと思うんだけどなぁ。そのうち押し合いし合いが始まるしだろうし。

 電気屋さんは「大丈夫ですよ」と言ってくれたけれど、とりあえず「バックバック」と少し下がらせてみる。


 しばらくすると下の二人は興味を失ったようで他の遊びをはじめ、次男は習い事に行き、最後は長男だけが残った。

 いつの間にか電気屋さんと会話したりして楽しそうに仲良くしてもらっている。誰とでもすぐに打ち解けるスキルは彼が一番高い。

 邪魔していないならいいか、とそのまま見学させていた。




 事が起こったのはそれからしばらくたってから。工事のことなんて忘れた頃のこと。


 ある朝、当時6年生だった長男の部屋を掃除しようと、掃除機のプラグをコンセントに挿そうとしたら……。


 コンセントが2つある!?


 元々あったコンセントの左20センチくらいのところに、コンセントが増殖していたのだ。


 え? なんで!? 昨日までなかったよね?


 キョロキョロと部屋を見回し、ふと視線を上にあげると。


 増えたコンセントの上、天井際の壁にに新しく電気が取りつけてある! 台所用の蛍光灯で使わなくなって車庫に置いていた物だ。


 それは、まぁいい。勝手に取りつけるのはやめてほしいけど、まぁ、許せる。


 でも、壁に穴を開けて、配線をいじるのはまずいでしょ~! 


「もう絶対にしたらダメだよ! 乾電池で遊べる範囲はかまわないけど、壁の中はダメ!」


 コードやらモーターやら豆電球やら、いらないのをたくさんもらってきた物で色々作って遊んでたけど、物足りなくなってきたのかなぁ。

 でもダメなものはダメ!


「家の中の電気はもういじっちゃだめだよ。資格がない人が工事したらダメなの。ちゃんとできてるようでも、後で漏電して家事になるかもしれないし、キミ自身もビリビリきちゃうかもしれないでしょ?」


 って口を酸っぱくして言ったのに。


 それから1週間もたたないうちにまたやってくれた。

 今度は勝手にあちこちのスイッチを入れ替えてる!

 やめようよー! って何度言い聞かせても、思い出したようにやってくれる。

 あれダメ、これダメは言いたくないんだけどねぇ。


 数年たって、やっと家の中の電気をいじらなくなったのでした。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る