知ってるようで、知らない日常。自分ではない自分の記憶。複雑怪奇な現象が、礒野の気楽な大学生活を襲う。
次々起こるできごとは、目眩がするほど不思議の連続。しかし味のある登場人物たちが繰り広げる緻密かつ周到な解説のおかげで、期待をフツフツ高めながらも文字を追う目が止まらない。
ここまで作り込まれた特上のSFは、WEB小説として久しく出合えていなかったように思います。
礒野を取り巻く友人たちがこれまた個性派揃いで楽しいのです。物語を追うばかりでなくて、「彼らをもっと見ていたい」と強く思わせてくれる面々。
ちなみに私は怜に惚れてしまいました。彼女が出るたび、良い意味で、しんどいです。
二つの世界の螺旋カノン、むちゃくちゃ面白いので是非に。
不思議と、青春とが、詰まってます!
面白い。
何度言えば伝わるだろうか。
本当にこの「二つの世界の螺旋カノン」は面白い。
通奏低音として流れる慟哭にSFとオカルトと青春が乗っかった普遍性を備えた物語。
理不尽さに対抗する覚悟とそれを支える優しい奴ら。
冒頭から暫くは主人公「磯野」の所属する文科系サークルの緩やかでどこにでもある日常が描かれる。
緩やかな日々が続くかと思われたが、「磯野」はあるキーアイテムをきっかけに目眩に襲われ気が付くと奇妙な世界にさ迷い込んでいた(「1-6異常なのはこの世界の方だ)。
その世界は「色彩が薄く、無人・無音の空間」。
「磯野」の身に何が起きたのか。これから始まる事件の異様さの端緒に触れたなら(「1ー10そっちこそ誰なんだ?」)、そこからはまさに怒涛だ。回を追うごとに謎が謎を呼び、話数を重ねるごとに面白味も増して行く。
しかし、物語は事件の謎に終始しない。
決して謎で引っ張るだけの展開ではなく、複雑になりそうな話に読者が置いてけぼりを喰わないのは、やはり登場人物の溢れんばかりの魅力が物語を牽引しているからなのだろう。
彼らにまた会いたくなる。そんな気持ちにさせてくれる奴らがここにはいる。
彼らの趣味や好き嫌い、信条なんかが習慣として彼らの行動にしっかり根ざしており、生活にリアリティがある。
登場人物の言葉や行動が「心の導線を大事に」描かれ「一人の人間がちゃんといる」のだ。
劇中で語られる演出論同様、作者が登場人物との間にじっくり信頼関係を築き上げて来た結果なんだと思う。
所々で釣ってくるマニアックなネタ!
琴線をくすぐる台詞の応酬!
さらりと触れてくる理論もどれもディープ!
スピーディーな展開に可読性の高さ!
感情を揺さぶるエンターテインメント!
(!5つでワンアップ)
本当にこの「二つの世界の螺旋カノン」は面白い!
本作は主人公である大学生・磯野君が並行世界を行き来するお話です。気楽な大学生活を一変させる非日常に磯野君は戸惑いながらも温かく優しい仲間たちに支えられて世界の謎に迫ってゆきます。
謎が謎を呼ぶストーリーはとても練られていますし、登場人物たちも魅力的です。SFに詳しくない私でも楽しめたのでみなさんもきっと大丈夫。
惜しむらくはこれがゲームでないこと。だってヒロインたちが全員、かわいいから! ヒロインごとにルートを攻略したかったです! ちなみに作者さんのツイッターをフォローすると、作者さんが書いた素敵なイラストも見れますよ。どれも素晴らしい出来です、眼福。