中指のささくれ
@amadokisigure
中指のささくれ
カーテンレールに引っ掛けていたタイトスカートが、バランスを崩してハンガーごと落ちた。拾いに行こうかと一瞬迷ったが、目の前のグラスが寂しそうに私を見つめるものだからついつい浮かせた腰を降ろしてしまった。
「あ~あ~、明日にゃ皺になってらぁ」
独り言をつぶやいたつもりだったが、カンッとキッチンの蛍光灯が返事をしてくれた。こいつのやけに人工的な白い明かりは好きにはなれないが、案外優しい所もあるじゃないか。手元のグラスの中でキラキラ反射しているその光は何だか綺麗で、蕩けそうに光る中身も心なしか甘そうに見えた。
「もう一度、みんなで酒を飲みたかったなあ」
返事は返ってこなかった。
グラスを煽った。酒は苦かった。
中指のささくれ @amadokisigure
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。中指のささくれの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます