理想の「戦うおっさん」と出会いました♡

 私はカクヨムで一、二を争うおじさん好きでございますが、その分、おじさんキャラにはかなりうるさいほうでございます。私めの理想のおじさん像はすばり、「やや影があって、渋くてカッコ良くて、無口なのに優しくて、物知りで強くて、何があっても動じない、包容力のある」お人。
 そういうおじさんがこの世にいるはずないことは重々承知しておりますので、理想のおじさん探しはもっぱら二次元でやっているのですが、実のところ、二次元でも先の贅沢な条件に合致するおじさんにはなかなか出会えません。日々、「おじさん」「おっさん」でキーワード検索をかけておじさん探しをしているのですが……。

 そんな私の前に颯爽と現れたのが、本作品のおっさん主人公ハイン・ペスタロット氏38歳。女子ばかりの学び舎に入学してきたおっさんの学園生活、という紹介文から、一見「ハーレム系か?」という印象を受けるのですが、おっさんが「元石工」という職歴を持つという設定に興味を覚え、おっかなびっくり作品世界を覗くと、何とこのおっさん、私の理想の殿方ではないか!
 渋くて肉体派で(ここ大事)、多くを語らない心優しき熱血漢。石工という過去の経歴とトシを重ねた分の知識と機転と懐の豊かさで、若者たちを危機から救い、温かく勇気づけ、さりげなく導いていきます。しかもちょっと照れ屋でカワイイ。もうたまらんです。

 そして、おっさん主人公の魅力を存分に引き出しているのが、丁寧に描かれるサブキャラたちと、リアル社会の風刺を練り込んだ綿密な世界設定です。同級生となる女の子たちは決して「読者サービス」的なキャラではありません。それぞれに個性があり、物語を牽引したり主人公ハインを引き立たせたりと重要な役目を担っています。
 学園の先生たちも敵役らしきキャラたちも様々な過去や事情を抱え、エピソードが進むごとに物語は群像劇の様相を呈し、軽いタッチの文章ながら深いストーリーが展開されていきます。おっさんハインが巻き込まれる諸々の事件を通して、階層社会や学問のあり方、さらには人生論に至るまで、リアルに通じる様々なテーマがさりげなく語られているところも、実に味わい深いです。この「深さ」は、やはり主人公が「おっさん」でなければ出せない類のものであろうと思います。

 主人公ハインと同世代のおっさん方から、彼のクラスメートたちと同年代の若者まで、幅広く楽しめる作品です(「第六章その5」まで読了した感想です)。

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