たぐいまれな白金の髪と萌えいずる若葉の瞳をもつ美少女セレーヌは、13歳まで修道院で育てられた。実母と生き別れ、敬愛する前院長を亡くした彼女は、身に覚えのない罪で死刑を宣告されてしまう。彼女の前に現れたこの街の死刑執行人フィネは、少女に取引をもちかける。彼女の生命を救う代わりに――結婚して欲しいと。
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衝撃的な導入で始まる物語です。フィネという男、いったいどんな変態かと(失礼)思いつつ読み進めるのですが、意外に彼も、彼の母ミリーも極めて健康な倫理観の持ち主です。
中世において、社会で必要とされながら忌み嫌われてきた「死刑執行人」の家系。その一族に産まれ育ち、人間の醜さを観てきたからこそ、フィネはセレーヌを大切にすることが出来たのかもしれません。
ミリーとフィネ親子に慈しまれながら、徐々に心を開いていくセレーヌには、ある人を探し出したいという想いがありました。それは、幼い頃に別れた「だいすきな、お母さん」――。
真実を求めるセレーヌは、やがて残酷極まりない現実と直面します。
作者さまの豪華で耽美な筆致でつむがれる物語は、いつもながら人の愛憎を克明に描きだします。時に儚く、無情なまでに美しく。
他の作品との共通点もあり、既読者にはその縁を辿るのも嬉しいでしょう。勿論、初めてでも理解できます。
脆いところもあるけれど懸命につよく生きようとする少女と、彼女を護る「死刑執行人」の物語。どうぞご堪能下さい。
キャッチコピーにマザコン、とありますが、主人公セレーヌとその母親の関係は実に複雑です。読む人によってはセレーヌの抱く感情のあれこれに違和感があるかもしれませんが、そうと感じられるのはもしかしたらご自身のお母様との関係が「正常」だったおかげかもしれません。
古くから母と娘の関係は難しいと言われてきました。しかしセレーヌとその母の関係は関係と呼ぶことすら難しく、セレーヌにはいっそまったくなかった方が幸せだっただろうというほどの記憶しか残されていません。それが長らくセレーヌを苛み続けていました。まるで呪いをかけられたかのように。
13歳のセレーヌの世界は小さな箱庭のような修道院での暮らしで作られていました。その箱庭から放り出された時、助けてくれたのは王子様ではなく死刑執行人という忌み嫌われている職業の青年フィネでした。
しかしフィネはセレーヌに修道院での外の平穏な暮らしを与えてくれます。そして悩み苦しむセレーヌを包み込み、優しく癒してくれます。彼の言動のひとつひとつが、血まみれだったセレーヌの心の傷をひとつひとつかさぶたに変えてくれます。
でも、セレーヌとフィネ(とフィネの母親でありセレーヌにとったら姑に当たるミリー)の平穏な暮らしはただでは続けさせてもらえません。
セレーヌには忌まわしい出生の秘密があり、彼女には邪悪な王子様と対峙して母にかけられた呪いを解かねばならぬ宿命があるのです。
彼女の呪いは解けるのでしょうか? いつ、誰の手によって? そして邪悪な王子様を無事倒すことはできるのか?
セレーヌの行く末をどうぞ見守ってください。
見に覚えの無い咎で処刑される運命にあった修道女セレーヌ(13歳)は、10歳年上の処刑人であるフィネの妻になることを条件に生き永らえます。
フィネと彼の母親ミリーとの生活はセレーヌの心を解して行きますが、セレーヌが抱えた過去と、彼女の生きる目的が明らかになると共に、セレーヌは産まれながらの宿命を知り、宿命に翻弄されて行きます。
個性豊かなキャラクターをご紹介。まずは主役のセレーヌ。
美貌と実年齢より若く見える容姿を持つにもかかわらず、意外と激しい気性の持ち主。
セレーヌの夫で、処刑人の家系に産まれ、その職務を全うするフィネ。(イケメン枠の一人)
フィネの母親ミリー。優しさ溢れる肝っ玉母さん。
セレーヌの育った修道院の現院長イディーズ。私は密かに無自覚勘違いの女王と思っております。
美貌の軍人。しかし脳筋男のジリアン(この作品一のイケメン)と妻であり義妹のレティーユ(美女)
そして、ジリアンの部下達(ジリアンと愉快な仲間達とも言える)
特筆すべきは、際立ちまくる悪役。異常性癖の塊ルベリク。(ド変態中年イケメン)鬼畜の中の鬼畜。サイコパスとも言える彼の活躍(?)等々、見所は多いです。
作者様の詳細な心理描写。繊細な人物描写等々。隅から隅まで、じっっくりお楽しみ下さい。