第6話
魔法訓練実践室、そこは、大きなドーム型の部屋で、危険を伴う魔法訓練、模擬試合の場として使われる。部屋全体に、外部へのダメージを和らげる魔法、中のものが死なないよう、魔力を制限する魔法がかけられている。非常時には避難場所として使われるほど、頑丈に作られたこの部屋は、初代学校長以外、壊せたものはいないと言われている。そんな魔法訓練実践室に、二人の人間が立っていた。
「準備はいいか?ヒロ、お前とは一度こうやってやりあいたかったんだ」
「はぁ」
「もとはといえば、お前がこの学校に必要な力の持ち主だと思い、招き入れたわけだが、ヒメはともかく、お前はその力の片鱗すら見せていない」
「あの、アレイア先生?」
「今こそその力、確かめさせてもらおうじゃないか」
駄目だこの人、話聞いてない。さてさて、なぜこんな状況になったかというと。...
「アレイア先生、話があります」
「あぁ、私もお前に話がある」
「辞めさせてください」
「私と戦え」
「はい?」
「なに?」
「なんで戦うんですか?俺に死ねと?」
「なぜ辞めたいんだ?辞めさせないぞ」
「え?」
「確かにあの新聞はまずいが、お前は基本勤勉だからな。あれだけを理由にクビにはできないと職員会議で決まった。というか、ほぼ校長の意見だ」
「それでなんで戦うんですか?」
「会議中にうちのクラスの委員長が来てな、『ヒロ先生を辞めさせないで』と言ってきた。『ヒロ先生クビ反対派』の署名を持ってな」
委員長、確かメイってやつだ。
「そしたら、今度は副生徒会長が、『ヒロ先生クビ賛成派』の署名を持ってきた」
「なんですか、『反対派』『賛成派』って」
「お前の印象が人によって違うってことだ。反対派はほとんど女子。『賛成派』は副生徒会長を筆頭に、私に挑んでくるやつ、反対派以外の女子や男子だな。そうだ、よく私を見て目をキラキラさせてるやつらだ」
賛成派の署名理由、なんとなく分かった気がする。
「まあ、どちらもそれなりに数が多いから、両方を納得させるには」
「勝負」
「そうだ、私が勝ったらクビ...のつもりだったが、お前は辞めたがってるようだし、私も出来れば残っていてほしいからな。お前が勝ったら辞職、私が勝ったら無理にでも残す。ってことだ」
そして現在。
「アレイア先生が勝ったらあの男が残って、あの男が勝ったら辞職?普通逆でしょう、これじゃ満足にアレイア先生を応援できないじゃない!」
「まぁまぁ副会長抑えてください。というか『あの男』って、副会長、ヒロ先生と面識ありましたっけ?」
「校内をアレイア先生とあの男が並んで歩いているのを見る度、怒りが沸き上がってくるわ。なんであんな腑抜けた男がアレイア先生の隣にいるの⁉」
「それはさすがに...ヒロ先生だっていいところありますよ?教え方うまいし、普段無愛想でも、話しかけると意外に優しくて」
「ようは生徒をたぶらかす変態でしょう?あなたも学級委員長なら、もっとしっかりしなさい」
「は...はい」
「ヒロ、ハンデで武器使用を認めてやったんだ。がんばれよ」
「あ、はい」
一方その頃、ヒロの部屋で。
「なんか外が騒がしいけど、なんだろう。もうお兄ちゃん、物を作るのはプロ級なんだから。これじゃトイレにも行けないじゃ...もしかしてお兄ちゃん...私に漏らさせて...?、どうしよう、さすがの私もそこまでのプレイは...でも、お兄ちゃんなら...あれ?何か落ちてる...これって」
ふたたび魔法訓練実践室。
「それではこれより、アレイア先生とヒロ...先生による模擬試合を始めます。なお公正のため、審判は私、パシカ・ストレイルとメイ・ヒィフスの二人で行います。それでは両者用意」
いつもの黒スーツのまま、アレイアは杖を構える。俺はいつものパーカーのまま、ボーガンを構える。
「始め‼」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます