ブラコンの妹とシスコンを認めたくない兄が異世界の扉を発見した結果。その2

秋野シモン

第1話

 前回、といってもごく最近、俺と妹は異世界の扉を発見して。思いがけない冒険をした。そしてまた、俺は異世界へ向かおうとしている。しかも、前とは別の世界へ。

「お兄ちゃん、かっこよく自分語りしているところわるいけど、今公衆便所の前にいるんだよ」

 そう、俺たちの前にあるのは、公衆便所。しかも、持ち運びができるボックスタイプ。

「まさか、異世界への扉が、公衆便所のドアと重なるなんてな」

「ねぇ、ブランコの時といい、お兄ちゃんのマイコンピュータって、わざと際ものばかり探してない?」

 こんなことを言っているのは、俺の大切な妹ヒメ。細かい説明は省略するが、ブラコンだ。俺が誰かは、説明が面倒なので、シスコンでは無いとだけ言って置こう。

「お兄ちゃん、どうやったら、異世界に繋がるの?このまま開けても、あるのは便器だよね?」

「前と同じだ。ノックだよ。ただし、今回はパターンが決まっている。トントトントンだ」

 妹がそのリズムでノックする。

「花子さんが出てきたらどうしよう?」

「公衆便所に花子さんはいないぞ」

「じゃあ、開けてみる」

 公衆便所のドアが開くと、見えたのは青空だった。拓けた高所にでも繋がっていたんだろうか?そう思いながら1歩を踏み出すと、その足がつく地面はなかった。

「あれ?」

 とっさにヒメがつかんでくれたから良かったが、危うく落ちるところだった。慌ててこっちの世界へ戻ってくる。

「おいおい、どこに繋がってるんだ?」

「お兄ちゃん、向こうにちょっと足場があるから、行ってみる?」

「それ怖すぎるだろ」

「でも行ってみようよ」

「え~、行くのか」

 俺たちはドアの向こうにある僅かな足場を渡ってドアの裏に回り込んだ。そこにあったものは、鐘。

「なるほど、ここは時計塔か」

 しかもその縁際に扉があったようだ。なんでそんなところに。

「とりあえず、降りてみるか」

 俺たちは階段を見つけ、降りることにしたが、軽く20階ビルくらいの高さがあるため、下に着く頃には、俺の体力が限界だった。エレベーターをつけて欲しい。俺たちがいた時計塔は、大きな建物の一部だったようだ。

「お兄ちゃん、魔法使いって知ってる?」

「ん、なんだよ急に」

「あれ」

 妹が指差す先には、なるほど、魔法使いがいる。『何言ってんだこいつ』と思った人、箒にまたがって空を飛ぶ人間を見たら、誰だってそう思いますって。

「あれ、君たち、入学希望者?」

 そう声をかけられて、声の主の方を見ると、そこには、パーカーにマントという色々おかしい格好をした少女がいた。ここは話を合わせるのが得策だろう。

「はい、妹の入学のために、一緒に下見に来たんですけど、どこから見ればいいか分からなくて」

「え⁉何言ってるのお兄ちゃん?」

「妹さん入学するんだ。じゃあワタシと同級かな?」

「え?」

「ワタシも今期から、この学校に入学するの」

そう言って、あの大きな建物を指差す。

「ようこそ!フェアリーフェザーリング魔法学園へ!」

魔法使いの学校はイギリスにあると思ってた。

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