第4話

 魔法学校といっても、授業内容はそれほど変わらない。『理科』と『英語』がない代わりに、『魔法学』と『魔法薬学』があるくらいだ。だから、俺たちは数日間、何事もなくそれぞれ学校生活を送っていた。

「おかしい」

「何が?」

「なんで何事もないんだよ」

「別にいいんじゃない?悪いことじゃないし」

「すっかりこの世界に馴染んじゃってるが妹よ、忘れるな、俺たちはこの世界の人間じゃない。思い出せ、科学文明の世界を」

「...そうだった!家に帰らないと!」

「俺もそうしたいが、あれ以降ドアが現れていない」

「そうなんだ。じゃあ、お兄ちゃんじゃなくて、先生にお願い」

「ん?」

「この本にかいてあることを、実際に教えて」

そう言って妹が取り出したのは、完全18禁の同人誌。

「うん。お前がぶれていなくて安心したけど、兄としてちょっと心配だよ」

「お願い、先生?」

そんなギャルゲヒロインみたいなお願いかたされても、俺の気持ちは変わらないぞ!多分。

「いいかヒメ、兄として、先生として言わせてもらう。俺は、お前にこれいじょう変態レベルを上げてほしくない。だからな、その本を今すぐよこせ!」

俺は妹から本を取り上げようとする。

「何!お兄ちゃんも読みたかったの?」

「違う!お前からその本を没収するんだ!」

「キャー!ヒロ先生に襲われる!」

「バカ!紛らわしいこと叫ぶな‼いい加減によこせ」

「ヒロ先生に襲われて、私の大切な...が奪われちゃう!」

「言葉の主語をはぐらかすな!ヤバイ意味に聞こえるだろ‼子供みたいに駄々こねるな、大人になれ‼」

「ヒロ先生のせいで大人になっちゃうー‼」

「マジでその叫び止めろ!このままだと本当に変態教師だと思われるから!」

「大丈夫だよ、生徒はみんな帰っちゃったし」

「それもそうか」

「ごめんね、お兄ちゃん!」

そう言ってハグしてくる妹。嬉しいが、中学3年にもなってこのなつきようはどうだろうか。

「あ、あ...せ、先生。これはどういう...」

はい、見られました。絶対誤解を受ける状態を、生徒に見られました。その後、叫びながら職員室に向かおうとするその生徒を引き留め、俺たちの兄妹関係を説明。

「ヒメさんとヒロさんはご兄妹だったんですか。どおりで、一緒の日にやって来た訳です」

「悪いな、変なところ見せて」

「いえ、生徒と教師が家族というのは、ミトとアレイア先生で慣れていますから」

「えっと、確かお前、うちのクラスの委員長だったよな」

「はい、メイといいます」

「そうか、メイ、悪いが、このこと、他のやつらには内緒で頼む」

「分かっています」

そして、メイは帰って行った。

「まったく、お前が不用意にくっついてくるから、今回みたいなことがあるんだ」

「お兄ちゃんは、私とくっつくのは嫌なの?」

「バカな、嫌なわけがないだろ!」

「だったらもっとくっつこうよ!お互いの大事なところを、1㎜の隙間もなくネットリと」

「おい、表現と擬音がおかしいぞ」

「もっと激しい方がいい?」

「頼むから普通にものをいってくれ」

「お兄ちゃんたら、『いってくれ』だなんて、さすがに、ここじゃ」

「語録が爆発してるな‼」

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