第2話

 俺たちは、魔法学園内を案内されている。

「ワタシの名前はミト、これからどうぞよろしくね。えっと」

「私はヒメ、お兄ちゃんは、えっとヒロって呼んであげて」

「よろしく、ヒメ、ヒロさん」

「さんはいらないよ」

「そう。はい、着いたわ。ここは教室練、その名の通り、各教室が並んでいるわ。ワタシたち、同じクラスだといいわね、ヒメ」

「う、うん」

クラスも何も、ヒメは入学しないがな。

「ここが特別教室練、手前から順に、魔法実験室、魔法薬実験室、魔法地学室、魔法ルンパッパ室。最後のは何用なのか、ワタシも知らないわ」

だろうな、ちょっと気になる。ルンパッパ室。

「一番奥にあるのが、学園内設魔法図書室。この国で2番目に蔵書数が多くて、在学中に全ての本を読んだ人は、まだ誰もいないわ」

「ねぇ、新入生なのに、なんで学校内に詳しいの?」

「ワタシのお姉ちゃんが、ここの教師なの。だからワタシ、小さいころからよく見学に来ていたの」

しばらくして、校舎から少し離れたドーム状の建物に着いた。

「さぁ、ここがこの学園最後の目玉、魔法訓練実践室だよ!」

「えっと、なにするところ?」

「魔法を実際に使う訓練や、実戦訓練に使うところ。今も誰か使っているみたい、見に行こうよ」

部屋の中に入ると、透明な壁の向こうに、2人の人間がいた。1人は、シャツの上にミトと同じデザインで、色だけが違うマントを羽織った少女。もう1人は、黒いスーツ姿の若い女性だ。

「あ、あれワタシのお姉ちゃんだ。おーい、お姉ちゃん!」

聞こえたらしく、スーツの女性が手を上げて答える。どこからか、ベルの音がしたかと思うと、その音を合図に、対峙する2人が、うっすらと光だした。ミトの姉の方が、少し光が強い。次の瞬間、シャツマントが、走り出すと、どこからか金属の棒のような物をとりだし、おそらくは呪文と思われる言葉を呟きだした。やがて、金属の棒の先が光りだし、その光でミトの姉を叩こうとするが、見えないバリアに弾かれた。いつの間にか、ミトの姉がバリアを展開していたようだ。そのまま、呪文を短く呟くと、姿を消し、シャツマントの背後に現れた。シャツマントは、何をされたのかバッタリと倒れた。

再びベルが鳴ると、透明の壁が消え、ミトは、姉に駆け寄った。

「すごかったね、お姉ちゃん!」

ミトの姉は、ミトの頭を軽く撫でる。

「そんな大したことはしてない、ちょっとした訓練だ」

そう言って、倒れているシャツマントを抱き上げる。

「それより心配なのはこいつだ。軽い失神系魔法をかけただけだか、念のため、保健室に連れていく。話があるのなら、後で職員室に呼びに来てくれ」

ミトの姉が出た後、俺たちに説明してくれた。

「お姉ちゃんは実戦科の担当教師だから、ああやって挑戦してくる生徒がよくいるの。みんなお姉ちゃんが返り討ちにしちゃうんだけど、たまにやり過ぎちゃうことがあって」

「お兄ちゃんなら勝てるんじゃない?」

「そんなわけないだろ!」

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