第3話
俺は手紙を封筒に入れて、物置部屋になっている和室の、古びたタンスの中に仕舞った。代わりに、その箪笥の上に置いていた小さな瓶を持って、もう一度縁側から庭に出る。
地面をうっすらと覆っている桜の落ち葉の上に、数枚の花弁が散っていた。この桜の木の根元付近に季節外れの花が咲くのは、俺も小さいころから何度か見たことがある。ほんの一枝の桜の花の、その下の地面を浅く掘った。ちょうど、手に持った小瓶が埋まるくらいに。
そこだけ、土は柔らかく、手でも簡単に掘る事ができた。けれどそれは、何の変哲もないただの穴に過ぎない。手の中の小瓶をそっと穴の底に置き、つい、辺りをきょろきょろと確認しながら、そんな自分にまた、苦笑した。
埋めた後の土の上にはまた、数枚の桜の花弁が落ちてきた。
明日もまた、俺はここを掘ってみるだろう。
明後日もまた。
桜の木の根元には 安佐ゆう @you345
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