迷いじゃないさ
湯煙
第1話
地下鉄の出入り口そばで立っていた、百六十センチくらいのモスグリーンのスーツを着た可愛い女の子をナンパしたはずだったんだ。
ホテルに入りシャワーを浴び、これからの時間を楽しもうとガウンを着て、シャワールームから出た。そこで俺が目にしたのは綺麗に化粧した男の裸だった。
「騙すつもりはなかったんだ。でも、嬉しくて……」
「シャワー浴びたら出て行くよ。ごめん」
と謝った。
一瞬唖然としたけど、嫌な気持ちにはならなかった。
白い肌のほっそりとした身体が艶めかしく、腕も指も細くて、喉仏と男性自身がなければ女のようだったからかもしれない。
「朝まで居ていいけど、
その夜、俺は
話を聞いているうちに、性同一性障害という言葉が気に入らなくて「性的多様性」と言い換えさせたよ。
だって、そうだろ?
そしたら
「ありがとう」
低い声の女の声みたいでゾクッとしたな。
俺達は朝まで話し合って、とりあえず友人として付き合ってみることにしたんだ。俺は
これから俺と
今度の長期休暇には、
あれ?
どうやら俺はどっちもいけるって初めて知ったよ。
いいさ。
自分の気持ちに素直になろう。
男が二人で手を繋いでいたら、日本じゃ変な目で見られるのは避けられない。文句を言っても社会は変わらない。
だったら、どこかの国で過ごせば良い。
――
迷いじゃないさ 湯煙 @jackassbark
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