量子パンツ

にぽっくめいきんぐ

量子パンツ開発秘話

『やったぞ! 成功だ! 量子パンツの開発に成功したぞ!』

「博士?」


『おお! 助手のすめらぎくん。喜べ! ついに成功したんじゃ。量子状態にあるパンツじゃ!』

「あの……博士、なんですか? それ」


『量子コンピュータは知っとるじゃろ?』

「量子力学的重ね合わせを用いて並列性を実現するとされるコンピュータですよね? 優れた計算能力を人工知能開発へ応用すべく、国が300億円くらい投資しようとしてるっていう……」


『それじゃよ。日本の投資額は、諸外国に比して少なすぎると言われてはおるがね。そこでワシは、パンツを量子化したんじゃ。日本はエロの追求世界一の国じゃからの』

「ちょっと、よく分からないんですが……」


『シュレーディンガーの猫は、知っているじゃろ? 皇くん』

「ええ。二つの箱があって、どちらの箱に猫がいるかは、箱を開けてみないとわからないという、あれですね?」


『そう、それだよそれ。わしはその思考実験をパンツに応用した。つまりこのパンツじゃがね?』

「ふっくらしていますね」


『当然じゃ。このパンツは今、何者かによってはかれているからな。仮にその主体を、女体Aと呼ぼう。女体Aが誰なのかは、パンツをおろしてみないと分からない。皇くん、じつはキミかもしれんのじゃ! はぁはぁはぁ』

「教授、それセクハラですよ? いちおう私、女性ですからね?」


『すまんすまん、つい興奮してしまった。いや、パンツにではないぞ? ワシの偉大な研究成果についてじゃ。わかるか? この興奮が。ぬがせてみないと、女体Aの正体は分からない。あたかも、宝くじのように。あたかも、全ての器官へと発達しうる万能細胞のように。パンツPを量子状態におくことにより、量子パンツPには、無限の可能性が生じうることになったんじゃ。どうだ? 興奮するじゃろ?』

「あの……女体Aは、実はおじさん、って事もあり得るんですか? 博士」


『ああ。あり得る。宝くじに例えると、ハズレクジじゃな。そしてこの量子パンツPを使って、さらなる研究をするつもりじゃ。人の興奮の本質は、パンツPそのものにあるのか? それとも、パンツPと女体Aとのリレーションシップにあるのか? はぁはぁ。さぁ、では量子パンツPをおろしてみるかの? 果たして女体Aは誰なんじゃろうな。はぁはぁ』


 ずずっ。


「なんか、腰のあたりがモゾモゾします……博士のその性癖、おかしいと思いますよ?」


<了>





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