24時間、戦えますか? ロボットで。
地崎守 晶
プロローグ 壊れたドライブレコーダーより
『警告、警告。装甲損耗大。搭乗者の保全のため投降を推奨』
赤く照らし出されたコクピット。響き続けるアラートを聞き流し、男はレバーを押し込む。突き出した鋼鉄の拳はあっけなく空振りし、足を掬われた機体は横転する。
『もう諦めたらどうでしょう。大事なフタキャクがおしゃかですよ?』
ねっとりとした言葉と同時、容赦ない鉛弾が浴びせられる。頭部カメラが砕け散り、モニタに砂嵐だけが映る。
「ああ、そう思うよ……」
呟き、ペダルを床まで踏み込む。が、鈍い音が響き、機体全体が激しく軋む。踏みつけられ、動きを封じられたのだ。
限りなく、絶望的。アラートを繰り返すシステムを確認するまでもなく、勝ち目は到底望めない。
「早いとこ帰って冷えたビールをやりたいよ」
襟元を緩め、目に流れ込む汗と血を拭い。
「でもな、俺にも色々かかってんだよ」
最後の切り札を使う前に、つぎはぎの気合を入れる。悲鳴を上げるフタキャクを宥めるようにレバーを握り直す。
「例えば、――」
その言葉を叫んだのか呟いたのか、誰も分からない。
すさまじい轟音が、二体の人型機動兵器を飲み込んだ。
24時間、戦えますか? ロボットで。 地崎守 晶 @kararu11
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