エピローグ

 麦の刈取りが終わったフォレストンに、夏の日差しが降り注ぐ。

 蝉たちの鳴き声が響くなか、裕太の軽トラックは静かに停まった。

「こんにちわー。兄貴、ねえさん」

「――おお、裕太。配達だな。今ハンコ持って来るよ」

「ユータ、暑いなか今日もご苦労だな。麦茶でも出そう」

 裕太は積み荷を降ろす。

「ありがとう、ねえさん」

「イルマ~。ハンコどこに置いた~?」店の奥から源太が言う。

「机の引き出しに入ってるであろう」

「兄貴、別にサインでも大丈夫だよ」

「あ、ポケットに入ってた。悪い悪い」

「決まった場所にいつも置いておけと言ってるであろう。たわけ!」

 イルマは源太の尻を思いきり叩いた。

いてえ!」

「そうだ、兄貴たち。そろそろお昼だけど、良かったらフィオナのお店に行かない?」

「ん~?今日のランチはなんだっけ」

「オナガ牛のミートボールパスタに、マルセシルチーズとベーコンのパスタ。それから……ツノ豚のカツサンド。どれもサラダとスープをつけるって」

「カツサンド!私はカツサンドが大好物なのだっ………コホン。あとでゲンタと一緒にバイクで行くとしよう」

「了解。フィオナもきっと喜ぶよ」





 僕が生まれた田舎果村には、異世界の地のフォレストンというとなり村がある。

 僕の家族は、その両方の村に暮らしている。

 僕にとっては大切な、ふたつの故郷だ。

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回覧板を届けにとなりの異世界まで 赤井ケイト @akaicate

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