第2話 死の宣告
街じゅうがクリスマスの空気に浮かれている中、どこか遠慮がちな静けさを持った場所がありました。
町外れの、冬枯れの木々に囲まれた閑静な建物でした。
真っ白で、なんだかとても清潔で、そのせいか妙に寒々しい雰囲気。
病院です。
時刻はまもなくお昼でした。太陽はますます明るく輝き、空は高く透明で、空気は冴えるように冷たく、人々はみんな忙しく賑やかですが、この場所にだけは落ち着いた時間が流れているようでした。
厚いガラス戸をくぐっただだっ広く寂しいロビーには小さなクリスマスツリーがなんとなく居づらそうに立っていました。他にはたいした飾り気も賑わいもありません。ジングルベルもクリスマスソングもなっていません。とても静かでした。
何人もの人々が行ったり来たりしていますが、賑わいとか盛り上がりとか、そういったものは感じられないのです。
考えてみれば当然ですね。何しろ病院なのですから、賑やかだとちょっとマズイですよね。
その広い建物の三階の廊下の一番奥に、一人の女の人とお医者さんが立ってお話してました。
二人の表情は、暗く、固く、とても真剣でした。女の人が立ちつづけにいくつも質問を浴びせますが、お医者さんは目を伏せたまま黙って首を左右に振るだけです。
女の人の顔には、深い悲しみと、疲れと、絶望と、そしてその瞳には涙が浮かんでいました。
でも、やっぱりお医者さんは、嘘をつくわけにもいかず、重々しくこう告げたのです。
「……手の施しようがないくらい、桜ちゃんの病気は進行しています……。たいへんお気の毒ですが、心の準備は、なさっていてください」
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