うまい!妖怪食の、そのさらに『向こう』へ……

世の中には “そこまでして食わないといけないものなのかっ?” と、
疑問を抱かざるを得ない「食」というものがあります。

北欧の発酵塩漬けニシンの缶詰とか、お隣半島のガンギエイのナンチャラとか、
我が国のクサヤにマグロの目玉とか、枚挙に暇がありません。

これほどイカモノグイが蔓延っているということは、きっとそこには
何らかの人類が到達すべき忍耐と見栄と飢えへの贖罪、
そしてちょこっとの “食えるんだからきっと美味さもある!” という探究心が、
ただ脳内麻薬の誘惑だけに留まらない「究極のヘブン」として、
『成仏』への「彼岸の道」のように厳然として存在するゆえなのでしょう。


登場人物たちは、その魔魅に魅入られたどうしようもない人外の
堕ちたグルメの成れの果てにして、勇気ある冒険者です。

“バカだっこいつら!” と、その無謀な戦いぶりを嗤いながら、
読み手である貴方もいつの間にか、
「なんとなく美味そうだし、食ってみたいな……」とか思っていませんか。

それは『高級なスシは美味いものだ』なる多少の思い込みに
彼らの修羅の如き奮闘を見知ったという事実、
またこの作品の食べっぷり描写の巧みさによる誘導を経て、
すでに登場人物たちの冒険にのっぴきならないほど巻き込まれているのです。

私たちは引き返すのか、このままギンさんたちに導かれるまま
『異世界すし処』に根を生やしてしまうのか、
人として急ぎ決めなければならないのです……!

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