万引きGウーメンはテレパシー使いで死ね

ちびまるフォイ

この小説はだいたいテレパシーでできてる

「あなた万引きしてたでしょう?」


「え、え、し、してないですよ」


男のしどろもどろな言葉に万引きGウーマンは確信した。


「いいからこっちへ来なさい」


店のバックヤードに連れて行きカバンを改めると、

男はカバンの中に大量のうまい棒(めんたい味)を隠していた。


「やっぱり盗んでたじゃない! 店長! やりました!」


鬼の首を取ったように喜んでいると店長は顔をしぶらせた。


「あの、Gメンさん……」

「ウーマンです」


「Gウーマンさん、こういうのやめましょうか」


「どういうことです?」


「たしかに万引きを捕まえるのは大事なんですけど、

 店の前でああいうひと悶着があるとほかのお客様が買いずらくて

 事実、少しづつ客足が減っていってるんですよ」


「そんな! それじゃ私は仕事なくなるじゃないですか!?」


「そこはなんとかして、店に迷惑をかけずに万引きを取り締まってくださいよ」


「えぇ……」


そんな無茶な。

Gウーマン(以降:G)は悩んで悩んで悩み抜いたさきに

ストリートファイター2をプレイしてヨガをはじめた。


ヨガの修行のすえにテレパシーを誰にでも送れるようになった。


スーパーで目を光らせていると、明らかに不審な動きをする客を

ヨガで磨かれた鋭敏なセンサーが感じ取った。ヨガすごい。


"あなた……今、鞄の中にかば焼きさん太郎を入れたわね……"


犯人は顔を上げてきょろきょろと周りを見渡す。

でもGは棚を隔てた死角にいるので絶対に気付かれない。


"探しても無駄よ。でもあなたのことは見えている。

今すぐそれを棚に戻せばあなたを捕まえることまではしない。


どうするの? 万引き犯としてこのまま捕まるか、

ただの買い物客として立ち去るか、ヨガの伝承者として一生を終えるか"


「なんで3択なんだよ!?」


万引き犯は迷わず盗んだ品を棚に戻して店を出た。

この働きぶりに店長は顔がほころんだ。


「いやぁ、Gさんすばらしい働きぶりだよ!」


「なんかゴキブリみたいなですね」


「君がテレパシーGメンとして頑張ってくれているおかげで

 客足はまた戻って、万引きはぐんと減ったよ!」


「テレパシーなら犯人に接触する必要ないですから

 私としても安心して取り締まれますね」


「これからもカサカサと頑張ってくれよ、Gさん」


「ゴキブリに寄せようとしてますよね店長」


Gはそれからもテレパシーで店を万引きから守り続けた。

平和な日常が続くかに思われたある日。


"あなた、今袋の中にココアシガレットを入れたわね……。

今、棚に戻せば悪いようにはしないわ"


今日も万引きの男にテレパシーを送った。

これで犯人は恐れをなして帰るだろう。


"フッ、そんなテレパシーの脅しがきくとでも?"


"なっ!? あなたもテレパシー使い!?"


テレパシー万引き犯はそのままダッシュで店の外へと逃げ出した。

怪しまれないよう万引き犯と距離をとっていたのが災いして逃がしてしまった。


「そんな……! 私以外にもテレパシーが使えるなんて……!」


テレパシーが使える相手にとってテレパシーを送って脅すのは

タネがわかっている手品を見せるようなものでなんの効果もない。


「店長すみません。まさかこんなことになるとは……」


「君以外にもテレパシーが使える人がいるなんてね。

 まぁいいよ。こっちはそれどころじゃないし」


「それどころじゃない?」


「店の商品がね、仕入れた量と合わないんだ。

 減っているならまだしも増えているから気味わるくて」


「はぁ……」


そっちのほうがどうでもいい気がしたが、Gは今後の対応を考えた。

テレパシーが使えない以上、昔ながらの方法を試すしかない。


すなわち、現行犯逮捕。


店の外ではできないので犯人をその場で捕まえるしかない。


「これでも万引きGメンピック金メダルを取った実力よ。

 テレパシー使わなくても万引きを防いでみせるわ」


Gは棚の影に隠れて万引き犯を見張った。

男はふたたびやってきた。


(この店がちょろいと思ってまた来たのね……許せない)


男は棚にあるラーメンばばあをそっと手に取って――。


(今よ!!)


Gは一気に飛び出して男の手をつかんだ。まさに現行犯。


「あなた、今このラーメンばばあをカバンに入れたわね!」


「…………」


「ふっ、私を見たって無駄よ。あなたの一部始終はちゃんと見てたんだから」


「あなたに会いたかった」


「えっ?」


男はそっと品を棚に戻した。


「ここで働くあなたをずっと見ていました。

 最初はあなたのテレパシーを傍受するだけでよかったけれど

 どうしてもあなたとの距離を詰めたくて……」


「それじゃ、あなたはわざと万引きを……!?」


「そのあと、商品は戻しましたけどね」


店長が言っていた仕入れた量にズレが出るのはこのためだったのか。

男が盗んだ品を戻すからズレが生まれていた。


「こんな僕ですか、許してくれますか?」


「いいえ、ダメです。Gウーメンとして見過ごすことはできません」


「やっぱりそうですよね……」




「だって、私の心を万引きした犯人は私の手で捕まえないと」


Gさんは男の手をしっかり握った。

It's a true love...







そのとき読者のテレパシーが届いた。


"なんだこの茶番"

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