最終話「BETWEEN!」
異世界での燃えるような夜が、明けた。
そして、燃え上がる城を確認してから、
今、再び遊馬は見慣れた
続いて門から出てくるナルリに、そっと手を差し伸べる。
その手に手を重ねて、彼女も強気な笑みで
「さて、あとは……まあ、そうなるよね」
「あ、うん……えと、手伝おっか? あたしも、ほら……
遊馬の部屋は、見事に汚れていた。
数千人の避難民が門から門へと移動したのだ。それも土足で。
異世界での一夜は、現実の世界……遊馬の世界では一秒にも満たなかった。
そのことを口にしたら、ナルリは腕組み考えてからパッと表情を明るくさせる。
「ほら、遊馬ってあたしの、あたし達の時代の過去っぽいじゃない?」
「そっちの異世界が進んだ文明ってのは認めるけど……もしそうなら」
「うん、そうだとしたら……ソロモンリングも含め、門は空間だけでなく時間も超える」
「つまり、僕達は出発した時間軸の現代に戻ってきたんだね」
納得し終えたと同時に、バタバタと階段を上がってくるスリッパの音が聴こえた。
同時に、ドアの外に気配が立つ。
ナルリが珍しそうに顔を
「姉さん? 僕だけど、どうかしたかな?」
「どうかした、じゃないわよ! ドタバタうるさかった! あんた、なにやってんの?」
「えっと……ちょっと、その、救世主を」
「……勉強し過ぎた? 壊れた? あのねー、大学も国立一本とか考えなくていいんだからね!」
「ど、どうも……その、ええと……あ! そ、そう、友達が来てるんだ」
「あらそう? 友達ねえ……グフフ、女友達?」
「そんなとこ」
「じゃあ……なにやってんのか聞くだけ
謎の
安堵の溜息をついて振り向くと、ナルリが何故か
美少女ヒロインがしてはいけない表情で、
「……友達なの? あたし。遊馬とあたし、友達なんだあ。ふーん」
「や、それは言葉のあやというもので。参ったな」
「ふふ、でも嬉しい。遊馬でも、
「いや、でも……とりあえず、友達というより、仲間。……相棒、かな」
「うん」
二人は、今来た門と反対側の方向を一緒に見詰める。
本棚にできた
だが、そこで遊馬は奇妙なものを見付けた。
それは、押入れのふすまに貼り付けられた一枚の紙だ。
文字だとわかったのは、ソロモンリングのおかげだ。
すぐにナルリがそれを
「えっと……なになに? 救世主ナルリ殿と遊馬殿へ。国と民の危機を救われたこと――」
救世主ナルリ殿と遊馬殿へ。
民の危機を救われたこと、感謝の言葉もございません。
また、ナルリ殿には格別の温情を
星をも
力を持ちつつ、それを使わぬ道を選んで、今……民のために戦いましょう。
民こそが国、その民を守る全てが私の戦いと覚悟しております。
女を捨てて、これより私は未開の地を……この剣を抜かずに切り開きます。
再び民に安住の地を約束することで、
――
「……うそ、遊馬……えっと、これ」
「ん、もしかしてもなにも、そうなんじゃない?」
「リーンって、あたしの氏族の
「ナルリと僕が助けたのは、ナルリのご先祖様だったんだね。ナルリ、君はやっぱり自分の一族のためになにかを成し遂げたんじゃないかな」
驚きに固まっていたナルリが、パァァァっと笑顔を
ナルリの胸に顔を押し付けられながら、そのまま押し倒される遊馬。
「遊馬っ、あたし、あたしっ! こういうことって、あるんだね」
「お、重いよナルリ」
「重くないっ! ……そういえば、あの時も……あの
「今は、君の胸に
「……
「はは、挟まるのは得意なんだ。って、ああ……時間みたいだ」
遊馬に馬乗りになったナルリが、上体を起こして振り返る。
押し入れの前に今、
ナルリとの別れの時が来たのだ。
それでも、ナルリは立ち上がらない。
「また、会えるよね?」
「うん。ソロモンリングを持ってるからね。……これ、英語のテストで楽できちゃうな」
「バカ……じゃ、じゃあ……そろそろ、行くね?」
「ん、また。また会おう、ナルリ。僕はいつも、全ての世界に挟まってるから」
「うん……じゃあ、また。あっ、そ、そうだわ! ソロモンリング!」
「うん?」
ナルリは右手のソロモンリングを一度外して、それを左手の薬指にはめた。
「こ、こうしとくから! あんたも、ほら!」
「えっと、それは――!? 待って、ナルリ……指輪が光ってる」
二人のソロモンリングが
その意味をもう、二人は知っている。
しかし、ナルリの帰るための門しか見当たらない……その時。
「ふえええっ、そこの人ぉ! どいて、どいてどいて、どいてくださいなぁぁぁぁ!」
不意に声が
それで
天井に今、巨大な門が開いていた。
そして、そこから……渦巻く中から、女の子が落ちてくる。
ナルリに
「ひゃっ! ふう……た、助かりましたのぉ」
「ちょっと! なによあんた、誰? って、その指輪っ!」
「まあ、ごきげんよう……あら? あなたも指輪を? これは素敵な女性からもらったのですわ。わたくしの名は――」
「いいからそのでっかいお尻、遊馬からどけなさいよ! あ、あれ? これって――!?」
その時、畳の上に門が開いた。
そう、今しがた落ちてきた少女が、自分の異世界から門を通じて……この部屋を経由して進む、他の異世界へ向かって。
「えっと、とりあえず二人共……降りてくれないかな、って!? お、落ちてるね」
「落ちるわっ、ちょっと! なによもうっ!? さっき戻ってきたばかりなのに!」
「あらあら、まあまあ……これでわたくしも、異世界で大冒険ですのね、うふふ」
こうして遊馬は、再び光となって時間と空間を超えた。
次元をも
非日常はいつも、いつでも、いつまでも。常に、そして永遠に日常を取り囲み、なんでもない日々を挟んで無数に存在している。そのことを改めて尻……もとい、知り、遊馬は再び
BETWEEN 異世界 TO 異世界! ながやん @nagamono
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