本作の主人公はちょっとだけ部屋が普通じゃないだけの、ごくごく普通の人間だ。たぶん一歩踏み出せば冒険に踏み出せる場所に居たのかもしれない。けれど遊馬は冒険に向かわなかった、ヒロインに連れ出されるまでは――
そんな感じで始まった本作の主人公はどこまでも普通の人で、ただ彼には世界の間になっている部屋に住んでいた事から生まれた縁だけがあって、その人と人の間に生まれる力で物語を進んでいく。
序盤の遊馬はただただ受動的だ、けれどそれでいいのかもしれない。だからこそ走り出した時の、能動に移り変わった瞬間が色鮮やかに見えるのだから。
話の筋としてはシンプルイズベスト。けれど王道と呼ぶに相応しい、雑誌に掲載される読み切り漫画のような清々しさを持つ作品だったと思います。
さぁ、あなたも僕のレビューを受動的に見るのを止めて、能動的に作品を読むという冒険に飛びだしてみませんか?