XX years later * 12/24

サンタクロースのお手伝いは、ラクじゃない

 この季節になると、いつも思い出す。

 夢だったんじゃないかって、何度も考えた。


 少しは、サンタクロースのように子どもたちに夢を見させてあげられただろうか。


 少しは、サンタクロースの力になれただろうか。


 サンタハウスのクリスマスツリーにくらべたら、お粗末なクリスマスツリーがリビングの日当たりの良い場所においてある。


「じぃじ、じぃじ」


「ああ、どうしたんだい?」


 一番下の孫娘は、あのエクボちゃんに似ているような気がする。


「このおほしさん、おちてたよ」


「ありがとう。てっぺんに飾ってくれないか」


「はーい」


 あの時の星の飾りは輝きを取り戻すことなく、毎年クリスマスツリーのてっぺんにいる。


 子どもたちに夢を与えるのは、ラクなことじゃなかった。

 いいや。与えられたかどうかもわからない。


 それでも、あの夢としか考えられない体験で関わったサンタクロースたちを、忘れたくなかった。


 本当に夢としか考えられなくて、誰にも話せないまま歳を取ってしまった。ネットでネタにするなんて、できるわけがなかった。


「ねぇ、じぃじ」


「ん?」


 エクボちゃんによく似た孫娘が、クリスマスツリーの手前で引き返してきた。


「このおほしさまちょうだい。ピカピカで、きれいだもん」


「すまんな、その星はじぃじの…………なんでもない。大事にしてくれるなら、プレゼントしてあげよう」


「わーい。ありがと、じぃじ。……あれ? じぃじ、ないているの? どこか、いたいいたいの?」


 もしかしたら、輝きを取り戻したこの星が、この孫娘をサンタハウスに導いてくれるかもしれない。


 サンタクロースのお手伝いは、ラクじゃなかったけど、少しは力になれただろうか。これからも、残りの人生、力になれるだろうか。




🎅Merry Christmas⭐

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サンタクロースのお手伝いは、ラクじゃない! 笛吹ヒサコ @rosemary_h

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