その星の軌道は遠すぎて、でも いつか必ず また飛来する

切なく、苦しく、でも限りなく優しくて甘い物語。

喉も胸も裂けてしまいそうなほど強く叫んでも、眠り姫には届かない愛。
やっと伝えられるかと喜んだのに。

少年から青年へ。大人になっていく者は、自分の足場を固めることだけでも、多くの迷いや悩みを抱えていて。
ままならない“自分自身”に歯痒くなっても、誰も代わりにはなってくれない。

相手を想えばこそ、自分には無理ではないかと絶望する。若芽のように柔らかで繊細な心。
いつしか、どちらの想いにも同調していて、読み進めていけばいくほど、ともに もがいてしまう。
この筆力は、凄まじいほどです。

細部まで こだわった、良質の映画を観たときに似た読後感。
頬に残る乾いた涙が、ラストの仄かでありながらも確かな希望に照らされて、爽やかな初夏の夜明けの風に粉と散る。

……なに言ってるのか分からなくなってきました。ごめんなさい。

薄暮から暗闇へ、そして曙に巡るカタルシス。

あまりの切なさに、途中で読むのを休止しても、きっと戻ってきたくなる。
そして、結末は。
戻ってきて良かったと、しみじみ感じ入る。

生きる迷いは、歳を重ねても生まれ来る。
そんなとき、思い出して力を与えてもらえる物語です。

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