切なく、苦しく、でも限りなく優しくて甘い物語。
喉も胸も裂けてしまいそうなほど強く叫んでも、眠り姫には届かない愛。
やっと伝えられるかと喜んだのに。
少年から青年へ。大人になっていく者は、自分の足場を固めることだけでも、多くの迷いや悩みを抱えていて。
ままならない“自分自身”に歯痒くなっても、誰も代わりにはなってくれない。
相手を想えばこそ、自分には無理ではないかと絶望する。若芽のように柔らかで繊細な心。
いつしか、どちらの想いにも同調していて、読み進めていけばいくほど、ともに もがいてしまう。
この筆力は、凄まじいほどです。
細部まで こだわった、良質の映画を観たときに似た読後感。
頬に残る乾いた涙が、ラストの仄かでありながらも確かな希望に照らされて、爽やかな初夏の夜明けの風に粉と散る。
……なに言ってるのか分からなくなってきました。ごめんなさい。
薄暮から暗闇へ、そして曙に巡るカタルシス。
あまりの切なさに、途中で読むのを休止しても、きっと戻ってきたくなる。
そして、結末は。
戻ってきて良かったと、しみじみ感じ入る。
生きる迷いは、歳を重ねても生まれ来る。
そんなとき、思い出して力を与えてもらえる物語です。
事故で闘病生活を送る藤崎燈子と中学時代の友人宗澤浩樹との純愛物語。
事故に遭い目を覚ました時には3年が経ち両親も亡くなっていた。それだけでも酷なのに一日三時間しか起きていられないという制限付き。三年という月日によって現実から孤立し、3時間しか起きられないことにより現在から孤立したことで変わることのできない燈子。一方、浩樹は3年間で進学し、高校生活を送っていた。その間、周りに流され、親の言いなりで変わらなかった浩紀。
ある日、起きた燈子と浩樹が出会い、止まっていた時間が動き出す。
高校生二人が織りなす純愛物語です。“時間”の違いですれ違う思い、それでも互いを大事にしている気持ちは一緒で、それぞれの言葉や思いが精緻に描かれています。
時間に追われている日々かと思いますが、一度この作品を読み“時間”について考えてみませんか。