魔王? 勇者? それともおかんにする?


 パウバルマリ食堂は、異世界とつながった定食屋。異世界で仕入れた食材をつかったモンスター料理を提供する。そしてその店を切り盛りするのが、おかん。
 定食屋は、現世界の住人と異世界の住人が常連として訪れる、ボーダレスな空間。

 本作の秀逸な設定は、異世界ではモンスターの肉を食べる習慣がない、というかその技術がないこと。そこに目を付けたおかんが、異世界から仕入れたモンスターの肉を調理して提供するため、現世界人も異世界人も、その「ここでしか味わえない料理」を求めてやってくること。

 ところが大事件が起こる。なんとおかんがモンスターにさらわれる!
 もちろん息子のユウトはおかん救出に動き出すのだが……、有給が……。

 とにかく世界観のずれっぷりが素晴らしい。
 強烈なキャラクターおかん、ブラック企業に就職してしまった息子のユウト、異世界の戦士エリカ、意識高い系の魔法使いや、居るんだか居ないんだかわからないおとん(笑)。この各人それぞれに、ちょっとズレた役回りを大真面目に演じてくれる。
 ハラハラドキドキしつつ、なぜか安心して見守れるストーリー。特にタイムリミットのある魔王討伐の「これ間に合うのか?」は半端ない。そのくせ、タイムリミットの理由もくすくすと笑えてしまう。
 とにかく、突っ込みどころが多い。一歩踏み出すごとに爆発する地雷原を歩くように、突っ込みどころがつぎつぎと用意されている。ここは突っ込んだら負けだ。「突っ込んじゃダメだ、突っ込んじゃダメだ」と唱えながら読もう。

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