日帰り、というより朝帰り!


 「日帰りファンタジー」として書き下ろされた本作。
 内容は異世界お仕事小説となっています。そして職種は水商売。いわゆるキャバクラ。

 異世界で経営されるキャバクラは、店の女の子がみんなモンスター。そして主人公の青年は彼女たちをまとめる店長(人間)。そりゃ気苦労が絶えないことでしょう。

 異世界×キャバクラという設定が新しい本作ではあるが、注目は実はその組み合わせではない。一番の見どころは、作中のキャバクラ描写のリアルさ。いや、リアルさなんて、甘いもんじゃない。これ、ガチです。そんじょそこらのキャバクラ物とは一線を画すガチなキャバクラ描写。とにかくインターコムを使用して秒単位で指示を出す店長たちの描写がすごい。被る指名に秒単位の割り振りをし、つぎつぎ起こるアクシデントに対応し、顧客の動きに合わせてお見送りをする。キャバクラの内幕ってこんな戦場みたいなのか。いや、戦場の方がもう少しのんびりしているんじゃないのか? ま、どっちも実際にいったことはないので、分かりませんが(笑)。

 つぎつぎと起こる問題を解決するために、とうとう店長は異世界の深部へと赴き、魔王を倒しに……いかない。いっそ魔王を倒しに行く方が簡単だっかたもしれないのだが、そうはならないところが却って難しい。

 キャバクラというと、どうしても、綺麗なお姉ちゃんが色仕掛けでバカな客から金を巻き上げる世界というイメージがあるが、本作で描かれているキャバクラは、客とボーイたちの真剣勝負。如何にもてなすか、いかに心酔させるか。

 ドラゴンやエルフであふれた異世界もよろしいが、このキャバクラの裏舞台こそ、まさに目から鱗の異世界であった。
 そして、勇者顔負けの大活躍をこなした店長さん。おつかれさまでした。

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