第2話 チュートリアル戦闘~これがSSRの暴力だ!~
将吾はシャルの案内で城の設備を巡った後に、城の宿舎で設備についておさらいをしていた。
シャルは現代的なホワイトボードを用いて将吾に説明を始める。
「という訳でお城の中で主に使う施設は強化・進化用の工房と、ログインボーナスや
「俺達が最初に居た所?」
「そうです」
「様子は大体分かった。なあシャル、これって現実に戻れるのか?」
「
「ああ、いける?」
「目を閉じてメニューと呟いてみてください」
「メニュー」
目を閉じた筈の将吾の視界に編成・強化・召喚・出撃・宿舎などといった項目が次々と現れる。
「オプションという項目からゲームを終了するって選択すれば大丈夫です。こちらの世界に戻る際は、普通にアプリを起動するだけでこちらに意識は移ります。その間、周囲の状況は把握できますが、集中力は大幅に低下するのでご注意下さい」
「これか……」
将吾がオプションの項目に意識を集中すると、音声や映像の設定の他に確かにゲームの終了がある。
「時間の進み方は?」
「ゲームを普通にプレイする時間とさして変わりません。何も知らない人から見ると将吾様はゲームに熱中しているようにしか見えません」
「オーケー。このゲームを普通の人と同じようにプレイするのと、この世界に居るのでどう違うんだ? さっきみたいにまだ公開されてない情報に触れられるのはわかったけど……」
「そうですね。この世界に居ることで戦闘時に柔軟な指示を出せます」
「柔軟な指示?」
「ゲーム上では戦闘時にコマンドカードを選ぶだけですが、こちらの世界から指示を出せばどのような配置で、どのようなタイミングに、軍が動くかを細かく設定できます。通常の戦略シミュレーションゲームと何ら変わりません」
「――ふむ。それは、いいな」
「ええ、的確な指示であればクリティカルや回避行動が発生しやすくなります。進路を選ぶことで、雑魚マスで強敵が出現する確率や、ボスマスに入るルートへの侵入率も操作できます」
「それ、外部から見るとどういう処理になるの? ゲーム上、あり得ない挙動とか出して、他人からチート扱いされない?」
将吾の心配はそこにあった。
せっかくのゲームなのに、真っ当に楽しめなくなってしまっては困る。
「ご安心下さい。ゲーム画面の上では、プレイヤーの幸運で済ませられる程度の乱数の偏りが発生するという解釈になります。今の我々の戦力でどうあがいても勝てない相手に勝つことは不可能です」
「それは良い。凄く良い。魅せプレイ動画が捗る」
「はい、ところで大事な連絡です
「どうした?」
「ワイバーンの群れが
「チュートリアル戦闘か」
「今回は適当な星1つの
「装備は?」
「ああ、
「それは良い。ついでに工房で強化素材使ってお前を更に強化していこう」
「成る程……それは楽しそうですね、
はしゃぐシャル。
――こうしてみると、普通の女の子っぽいよな。
そんなことを考えながら、将吾が目を閉じて出撃と念じると、突然宿舎の隅の空間が歪んで黒い穴が生まれ、その穴の中からモルガンが姿を見せる。
「失礼いたします。さっそくですが、貴方達の力をお借りしたい問題が浮上しました。ワイバーンが畑を荒らし、既に農民や警護を行っていた騎士に怪我人が出ております。どうか助けていただけないでしょうか?」
「ワイバーンですか?」
「翼竜のようなものだとお考え下さい。普段ならば手こずる相手ではないのですが、単独行動の多いワイバーンが十匹程度の群れ単位で行動していたもので……」
「ふむ……良い機会だ。任せてください! 行くぞシャル!」
「イエス、マイ
将吾達はマーリン王に連れられて早速郊外の畑へと向かった。
*
空を埋め尽くすワイバーンの群れ。
けたたましく鳴いて畑の上空を飛び交うその影に向けて、一台のM4戦車が進む。
戦車の車内に似合わないドレス姿のシャルは操縦席で自慢げに腕を組み、後ろの砲手席に座る将吾は手元に表示される戦場のマップを確認している。
「配置完了。周囲の森に他の武装乙女を潜伏させ、ワイバーンが頭上を通ると同時に対空砲火を行わせる。で、お前はワイバーンが逃げるまで此処で暴れ続けろ」
「イエス、
「えっと、『第一スキル:偉大なる凡作』の使用を許可!」
「了解! バステ解除、体力回復、攻防共に微増、クリティカル率10%アップ!」
「続いて『第二スキル:集団戦術』の使用を許可! ヘイト集中対象選択はシャル!」
「パーフェクトです
「ああ、覚えている。無駄な犠牲は出したくないからな」
「最終スキルの『虎殺し』も早くお見せしたいですねえ……よいしょっと」
シャルが指を鳴らすと、戦車に搭載されたブローニングM2重機関銃が勝手に動いて、砲塔のハッチから顔を覗かせる。
「おい、砲塔のハッチ開いたぞ? こっちに攻撃来ないか?」
「大丈夫です。
シャルの楽しそうな掛け声と共に、軽快で豪快な銃声が鳴り響く。
空中を我が物顔で舞うワイバーンは銃弾の雨が通り過ぎる度に一匹また一匹とその数を減らした。
引き換えに空からは文字通り血肉の雨が降り注ぎ、田園風景を赤く染めていく。
「うっ……」
将吾はミリオタだ。それと車内に居ても分かる血の匂いを嗅ぎ、しかも散々高速移動を繰り返した戦車の中に居て、無事で済むかはまた別の問題である。
「いかがしましたか
「う、うん」
「見て下さい! 武装によってダメージ倍率と効果範囲が変わるんですよ!」
「あ、あのね……」
「次は大型のワイバーンがやってきました! リーダーですね! これは私の装備している105mm榴弾で吹き飛ばすしか有りません! さあ、ご指示を! さあ! さあ!」
「ちょっと、待って……エチケット袋……無い……?」
「袋? 具合が悪そうですね……ああ、救護セットですか?」
「ち、違っ……うっ――」
シャルにとっては最も繊細な部分と言っても良い場所で、将吾は限界を迎えた。
一瞬遅れて全てを察したシャルは甲高い悲鳴を上げる。
「
その日、シャルは星5つの
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