比類なきSFキャラクターと構成の連続に、目が離せない!

 驚くべきSF小説。もしもSF部門とキャラクター部門が一緒だったら、この作品が大賞を取っていたかもしれないと思わされる。それくらい主人公のキャラクターが立っていて、彼女が繰り出すアクションも素晴らしかった。小生はガンアクションは苦手だったが、この作品に出会って、目が離せなくなった。物語の構成も、年月をまたぐのにタイムラグが一切なく、見事に過去と現在、未来を書ききっている。つまり、この作者様は文章力と構成力が並外れているのだ。
 物語はSFリミタリーもので、主人公は女性・橘菊花。橘はもともと厄を受けて人間を守るもの。つまり、自己犠牲の象徴だ。そして菊は日本における象徴的な花であり、昔は死者に手向ける花だった。もはや主人公の名前を見ただけで、胸が熱くなる。主人公はハニートラップもコンバットファイトも行う闇の仕事をしている。両親も妹も亡くした天涯孤独の身だ。そんな彼女はある人の依頼から、会社を裏切ることになり、戦いに身を投じることになる。同僚との対決。自分と同じ薬で強化された化け物との戦い。薬を開発した博士から託された物。その託されたものの中味は、ある人体実験の映像だったが、すぐに消えてしまう。
 そして、裏切りに次ぐ裏切り。新しい仲間。しかし黒幕として現れたのは、意外な人物で――。一体誰が誰と繋がり、誰が味方で誰が敵なのか分からなくなっていく。敵の味方は敵なのか? 敵の敵は味方なのか? 博士と妹との思いもよらぬ関係性は? 果たして彼女に新たなる希望は見えてくるのか? 
 読まないと損をする素晴らしい作品。
 是非、ご一読ください。

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