多分、天使の子。
今日は教室が騒がしい。いつもは我慢してるけど、今日はちょっとだるいぐらいだ。自分が疲れて嫌になってるだけような気もする。そういえば俺、ほとんど寝てないな。
俺は、悪魔と人間の間に産まれたらしい。よくわからないが、そのせいか人と上手く関われない。あと、人の黒いところがよく見える。それも感覚的じゃなくて、視覚的に。
キレイな笑顔で近づいてきても、砂糖を熱で溶かしたみたいな黒いドロドロを持ってたりするから、もう嫌になる。
「おい、ユウ」
「ハァー」
こいつはわかる、ただの馬鹿だ。裏を返しても同じ顔。この教室で一番マシなやつ。でも別に関わりたいとは思わない。
「今日もシケたツラしてんなぁ」
「今日はいつも以上に渋い顔してるよ」
「あぁ、くまがすごい」
「そうだろ」
軽く流して教室を出る。
「ちょっ、話あるんだけど?」
「ちょっとトイレ」
嘘です。
出身の中学は、図書室でもみんな普通に話してたりして、あまり静かではなかったけど、この学校の図書室は静かだ。こんな日は行ったりしてる。
奥の方の本棚に囲まれた窓際の席は、日当たりもよくてすごくいいとこなのに、誰も使わない。椅子が古くて、ポテチをバリバリ食べるような音が鳴るからだろうか?
本を持ってないとここでは足元がふわふわするように感じるから、テキトーにつまらなそうな小説を持ってきて眺めている。
背中は少し暑くなってくるけど、優しい春の日差しは憎めない。
「ん?」
この小説よりつまらなそうな顔をした女がこっちを見ていた。手ぶらで図書室の奥まで来た、変な奴。
目が合った。
こんなとこに来るってことは友だちいないタイプだろうな。人のこと言えないけど。
「どくよ」
「あ、いえ、構いませんよ」
1年生、かな?何だろう、凄い違和感……あぁ、まっさらだ。一つも黒くない。まっさらだ。こんなにつまらなそうな顔をしてるのに。
裏が見えない。一瞬恐怖を感じた。こんな奴は初めてだったから。
何故か隣に座ったそいつは、妙に楽しそうな顔になった。
「あんた、何なの?」
「ふふっ、何でしょうね」
いたずらっぽく笑ったけど、笑った声はありえないほど柔らかくて、、、可愛かった。
あー嫌になる。少し照れた。
多分、悪魔の子。 @hitsuji_sekaikan
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