ピアノ教室とコンクールの舞台裏、覗いてみませんか?

 ピアノにまつわる小説は多々ありますが、このエッセイは他の作品とはちょっと違う。天才たちがしのぎを削るわけでもなく、天才的な指導者が登場するわけでもない。どこかほのぼのとした、町で見かけるピアノ教室的の日常を描いた作品だ。
 音符がオタマジャクシにしか見えない小生にとって、ピアノ教室やそこに通っている同級生は、高嶺の花と言う感覚だった。しかし、この作品で身近に感じられるようになった。さすがに、ピアノ教室で本当にオタマジャクシを飼って、蛙になるまで育てたというエピソードには、思わず笑ってしまった。
 さて、ピアノ教室には、ピアノコンクールが付き物だ。小生はピアノコンクールとは、ピアノ教室に通う子供だけのものだと勘違いしていた。しかしコンクールに向けて学んで練習したり、試行錯誤するのは、ピアノ教室の先生たちも同じなのだと拝読し、驚いた。それに、ピアノにもバイオリンのストラスバリオス的なピアノがあることも、初めて知って、驚いた。
 そして、ピアノ教室に通ってくる子供たちと、一生懸命向き合う先生としての作者様は学校の先生とは違って、謙虚で人間味があって、優しさがにじみ出ていた。
 ピアノを弾いているのは、何も天才ばかりではない。
 「普通」の日常の中に、ピアノがあるのだ。

 是非、ご一読ください。

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