スクラッチには、ひっかくという意味とそこから転じてひっかいて当たり外れを判定するくじと、少なくともその二つの意味がある。
主人公は、哀れ魔法使いなどになったが故にひっかかれ通しの人生だ。頓珍漢な偏見から。自己嫌悪から。同じ魔法使いの醜悪な一面から。
もっと気の毒なのは、そうしたことどもが一つ一つ孤立しているのではなく、微妙に重なり合っていることだろう。
だから、作中のとある場面における彼女の笑いは大変残酷であり虚無である。まさにひっかき傷のような笑いだ。
そうやって、ありとあらゆる試練にさらされ削られ続けた結果は相手の本性を正確に写し出す鏡のようなきらめきであった。主人公の最大の理解者にして相棒の力の根源は、その意味でけだし逆説的だ。
なんにせよ、削りに削ってむきだしにされた主人公という名の人生のクジ。その結末は……。
女子力(物理)あふれる魔法使いは、心優しき化け物-オンナノコ-
このキャッチコピーを読んで、ドタバタ劇を想像した方はいらっしゃいますか?
滅茶苦茶シリアスです。
数多くのファンタジー作品に登場する魔法使い。火を起こしたり大地を揺らしたり、常人には不可能な術を使う事で知られていますよね。
このお話の魔法使いも、そんな感じ。ただし、人は魔法使いのことをこう言います。『化け物』と。
考えてもみてください。人が剣や弓で戦っている中、いきなり火や風を起こすような奴が現れたら。そしてそれ以上の力と、歪んだ心を持っていたとしたら……
そんな魔法使いへの風当たりの強い世界で、旅を続ける少女が一人。
彼女の名はスピカ。怪力の持ち主で、魔法使いで、そして優しい。
ハードな世界観ですけど、懸命に戦う彼女の活躍を見ていると、読む手が止まらなくなりました。
自称、か弱き乙女のスピカは、大木を根元から引っこ抜くほどのパワフルな少女。実は彼女は、人々から忌み嫌われる魔法使いだった。
その力にも、強靭な肉体や驚くべき回復力にも、意味がある。そして彼女の繰り出す魔法はどれも強力なものだ。
けれども、あくまでもスピカは女の子、一人の人としての生き方を望んでいた。
そんな彼女がいろいろな人と出会い、敵対し、困難を乗り越えて行く。
たとえ化け物と言われても、困っている人は助けたい。
そのうえで叶えたい望みがある。
読み手として、どれほどスピカと、彼女を支え続けるアルトを応援したことでしょう。
何度も「アルトーーー!!」と叫びたくなりました。
読みやすく、テンポもよく、先が気になる展開。
もう何もかもが凄すぎます。
ぜひとも続編で、まだまだ残された謎や気になるストーリーに決着をつけていただきたいです。
火・水・風・地の四元を操る強大な力と、その代償ゆえに、忌み嫌われる存在。
その「魔法使い」であるスピカは、化け物と呼ばれても、人のために戦う。
キャッチコピーからはちょっと予想外の、シリアスなプロローグ。
プロローグから一転して、コミカルな第01話。
キャラクターの会話は軽妙ですが、裏には深刻な世界観があります。
人の魂を喰らう魔物。
魔物と同等に恐れられる魔法使い。
正体を他人に知られたら、白眼視される。
それでも、スピカには、やらねばならないことがある。
魔法を使うシーンもカッコいいですし。
四元の属性間の相性とか、魔法を得る方法、いろいろな設定が積み重なって最後の大一番!
いやぁ、面白かったです。