八月六日八時十五分。広島にサイレンが鳴る──夏の情景たちを描く短編集

夏を主題とする短編集。
1本目に収録の「これまでと これからと」をまず拝読した。

東京から広島に引っ越してきた「私」は、ここに来て初めて、
自分が被爆三世であると知り、原爆の名残と爪痕を目撃する。
病院、方言、学力レベル、単身赴任の父が住む町、母の選択。

私も長崎の被爆三世で、八月のサイレンには馴染みがあるし、
核の利用や放射線に対する独特で敏感な価値観に接してきた。
何と表現すればいいのか……でも、忘れてはならないと思う。

続く3編は、すこしふしぎな夏の情景。

ある夜、部屋に帰り着いたら、同居中の弟がモフモフに……。
その年、日本という異世界で花を探して知り合ったのは……。
あの日、浴衣に想いを託して死んだ少女がいて、そして……。

読後には何だか優しい気持ちになれる作品たちでした。