女神さまは気まぐれ――アラフォーのフリーターを異世界転生させた話

３．女神の独り言 その２

　――ヨウタロウさんの提案には、正直びっくりしたわ。

　まさか、相手がどこに居ても必ず手紙を届けられる能力が欲しいだなんて。

　ようは、元の世界にいるご両親に手紙を送りたかった、ってことなのよね……。

　流石に、死んだ人間を元の世界に関わらせるのはご法度（はっと）なんだけど……あれだけ頼まれちゃ、ねぇ？

　仕方ないから「元の世界に送れるのは一回だけ」って制限を付けたわ。

　本当はそれもやっちゃダメなんだけど……たまにはサービスしないと、ね？

　無事に手紙をご両親に届けたみたいだけど……死んだ息子から手紙が届いて、ご両親はどう思ったかしら？

　喜んだかな？　偽物だと思って捨てちゃったかな？　それとも……。

　どちらにしろ、ヨウタロウさんはご両親がどう反応したか、知ることは出来ないんだけど……。私も怖くて見てないし！

　あ、そうそう。そのヨウタロウさんだけど、転生先でそこそこ活躍してるみたい！

　元々マジメで基礎能力も高いし、コミュ力（りょく）高いし？

　「手紙を必ず届けられる能力」も、物凄く役に立ってるみたい。

　何せ、「どこにいるか分からない人間」とか「閉じ込められてる人間」なんかにも手紙が送れる訳だからね……。

　使いようによっては、文字通り「チート能力」だよね、あれ。

　メッセージボトルを適当に海へ流しても、きちんと狙い通りの相手に一定期間で届くくらいだからね。

　ちょっとサービスしすぎちゃったかな？　まあ、いいか。

　……あとね、これは秘密なんだけど、ヨウタロウさんの幸運値があまりにも低かったから、ちょこっと私の方で水増ししておいたんだよね。

　うん、ホントにちょこっと。十円落とす場面で逆に十円拾うようになる程度の、ちょこっと。

　やっぱり、頑張ってる人には報われてほしいもんね？

　これからも応援してるよ！

　――あ、でも仲間の女騎士とちょっといい感じなのはムカつくかも。

　こっそり、あの女騎士の幸運値下げちゃおうかな……？