女神さまは気まぐれ――アラフォーのフリーターを異世界転生させた話

澤田慎梧

1.女神の独り言 その1

 ――ああ、忙しい忙しい。


 不慮ふりょの事故や病気で死んじゃった人の魂を、魔王の軍勢に苦しめられてる異世界に転生させるだけの簡単なお仕事……って聞いてたのに、予想以上の忙しさだわ、これ。


 毎日のように若い人が病死やら事故死やらしてるせいで、人材は選び放題! なんだけど……「当たり」の人って中々いないのよね~。


 面接の時に「お、この人なら大丈夫そうだ」って感じても、実際に転生させてみると、戦いを避けて「新しい人生」をエンジョイしようとする人も多いし。


 あと、最近特に多いのは、私が与える「女神の加護チート能力」に、戦いに役立つものじゃなくて、自分の欲望をかなえる為の能力を選ぶやつ!


 この間の人なんか最低だったわ~。「魅了チャーム」の加護を選んでいったんだけど、使い道は「手足となってコキ使える配下」と「ハーレム要員」の確保なんだもん!

 私の加護は、あんたの欲望を充足じゅうそくさせる道具じゃないっての!


 まあ、あの人は心がけがれすぎてて、転生先で上手くいかなかったみたいだけどね。

 ざまぁ。


 ――ともかく、転生候補は沢山いるけど、役に立つ人材が少ないのが、目下の悩みどころなの。


 あ、でも、時々は本当に「大当たり!」って人にも出会えるんだよ?

 この間もね――。

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