世界は百合の花で埋もれている
紅蛇
世界は百合の花で埋もれている
世界は、百合の花で埋もれてしまっている。
強烈な花の香りを漂わせ、世の中にある素敵なものを隠してる。
純白の花嫁のような花びらに潰された生命たちは、苦痛の悲鳴をあげる。
世界は百合の花に埋もれて、パンドラの箱に閉じ込められている。
そう、私たちは希望だけが残された悲しみの箱の世界にいる。
希望は箱の隅っこの方に埃まみれ、まだ見ぬ世界を待っている。
私たちは……。なんのために言葉を作ったのか。
それは相手に何かを伝えるためである。そう、想いを伝えるため。
私たちは苦痛の悲鳴をあげるのは、別の誰かに伝えるためである。
そう、別の誰かに……。
それはきっと裕福な世界の住人に、私たちの苦しみを聴かせるため。
同志よ、聞け。我々はこの世界にいるはずではないのだ。
苦痛ではなく、快楽を。
悲鳴ではなく、歓声を。
少女の流す涙は恐怖からではなく、喜びで。
狂わしきこの世界は、我々がいるべきではない。
自由の溢れる世界こそが我々の世界だ。百合の香りに絡まれて身動きできない我々ではない、錆色の花粉に色付けされる我々ではない。
我々は、自由であるべきなのだ。
世界は百合の花で埋もれてしまっている。このパンドラの箱に閉じ込められて。
だが、きっと蓋があるはずさ。きっと出口があるはずさ。だから……。
だから、我らの同志よ立ち上がれ。今こそが戦いの時だ。
我々の言葉は誰のもの。この言葉は我々のものだ。言葉を殺すな。
世界は百合の花で埋もれている 紅蛇 @sleep_kurenaii
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ゲームクリアを目指して/紅蛇
★9 エッセイ・ノンフィクション 連載中 17話
蛇行するヒト/紅蛇
★27 エッセイ・ノンフィクション 完結済 73話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます