第2話 俺の生きられなかった分も

目を覚ますと、俺は見覚えの無い真っ白な

空間にいた。

そこにあるのは肘掛け付きの

白い椅子が一脚だけ。

何故か俺はその椅子に座っていた。



そういえば、俺死んだんだっけ。

じゃあ此処が天国か…

でも、ここにあるの椅子だけじゃねえか。

天国って昔見た絵本に描いてあった

花畑みたいなイメージだったんだけどなぁ。


案外つまんねぇ所だな…


とりあえず、他に何か無いのか探そうと

立ち上がろうとした


が、立てない。


まるで椅子に全身がぴったりと張り付いて

いるようで取れないのだ。

せめて腕だけでも、と思ったが

やはり肘掛けから腕を動かす事は出来ない。


「おいおい嘘だろ…」


ぽつり と


そんな独り言を呟いた。


その瞬間、

天井から映画のようなスクリーンが

ゆっくりと降りてきた。

そして、スクリーンには

「3」

「2」

「1」

というカウントダウンが映し出された。

カウントダウンが終わり、

目に飛び込んできた映像は___



「俺が死んだ場所…?」


俺の死んだ後の様子なんて見たくない。


見るのが怖い。


それなのに、何故か目が離せない。


俺が轢かれたトラックの周りには人がいて

救急車を呼んでいる人や

悲鳴を上げている人がいた。

そして、その人だかり中には…


「優…」


俺が片想いしていた相手、井下 優いのした ゆうがいた。


俺達はこの時、一緒に帰っていた。

他愛もない話をして帰っていた。

ただ、それだけだった。


なのに、俺があんなことを言って急いで帰ろうとしたせいで…。


「ごめんな、優…。

俺が轢かれた時、俺の名前を呼んでたのは

お前だったんだな…。

でも、俺もう死んでしまったんだ。

俺の生きられなかった分もお前には幸せに

なって欲しい。だから…」


『これからは智己さんが優さんのことを

守ってくださいね♡』


そう言ってスクリーンの目の前に突然男が

現れた。


「うわあああっ!!誰だお前!!!」


真っ白なスーツを身にまとった男は笑顔で

俺の元へ近づいてきた。


「申し遅れました。

私は神様の下で働いている者です。

まあ人間の世界で言う部下ってやつですね。


それはおいといて、

ご存知かと思いますがあなたは先ほど

亡くなりました。御愁傷様です。

という事で今から天国へご案内します!!



…と言いたい所で・す・が、

只今キャンペーン中でして

下界に未練のある方にもう一度だけ

下界へ行けるチャンスを与えております!

ただし、期限は一週間です。」


「つまり…もう一度優に会えるってことか!?」


俺は会ったばかりのこの怪しい男の言葉が

信じられなかった。


まさか…もう一度優と話せるチャンスがあるなんて…!!


「勿論、タダでは行けませんよ。

未練のある方の元へ天使として現れて

その方を身の回りの危険から守ってあげて

下さい。

さあ、あなたはどうしますか?」


「もちろんやるよ!こんなチャンスを逃す

訳にはいかないだろ?」


天使として現れる…という言葉がちょっと

気になったがそんなこと今はどうでもいい。

俺はその条件を受け入れた。


「よろしい。では、目を閉じて、私と一緒に10秒数えて下さい。今からあなたを下界へ

お連れします。」


男が落ち着いた声でカウントダウンを始める



「10、9、8、7、6、5、4…」


今から行くからな、優。


「3、2、1…」







次こそは、ちゃんと気持ちを伝えるから。


「0」


その瞬間、俺の意識がふわっと何処かへ

飛んでいくのを感じた。









しかし、

この時の俺はまだ知らなかったのだ。



俺が死んでどれだけ優が苦しんでいたのか。

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人生で一番短い『』 金城 夏羽 @natsuha_nano

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