5.集合命令

女性と会った階のひとつ上、恐らく四階と思われる階に足を踏み入れる。

やっぱり、ここも雰囲気ふんいきは同じだ。扉は全部でふたつ。もしかして、奇数の階は部屋がひとつで、偶数の階はふたつだったりするんだろうか。


まず、手前の部屋をノックする。が、反応はない。しーんとしていて、物音すら聞こえない。

ひかりちゃんやマリアさんの部屋なのかもしれないし、誰かが中でひっそりと息をひそめているのかもしれない。


しばらく、部屋の前で立ち往生。

そして、もう一度扉をノックするも、やはり反応はない。

諦めて奥の部屋に向かった方が賢明けんめいか——そう判断したところで、なにやらノイズが聞こえてきた。


『これを聞いている全ての人間に告ぐ。今すぐ一階に集合しろ。繰り返す。今すぐ一階に集合しろ!』


少し荒々あらあらしい男の声。

僕らをここに閉じ込めた犯人——?


いや、わからないか。別にそうとは限らない。どこかに放送室があって、それを偶然ぐうぜん見つけたのかもしれない。

そうだとしたら、良い発見だ。開かなかった部屋のうちのどれかなのだろうか。


ひとまず、向かおう。

もしこれが犯人だとしても、そうじゃないとしても。一階にはマリアさんやひかりちゃんがいる。さすがに放置はできない。

ノックした扉に「呼び出しがあったので向かいます」と声をかけ、階段を駆け下りる。



一階に着くと、すでに何人か集まっていた。

マリアさん、ひかりちゃん、ユキさん、そして中年の男性。僕を含めると、全部で五人が一階に集まったことになる。

マリアさんはひかりちゃんを抱き抱え、ユキさんは部屋のすみでひとりで立っている。中年の男性はソファに腰掛こしかけ、不安そうな表情を浮かべていた。


中年の男性が、なにやらブツブツ呟いている。

「残りはまだ来ないのか……というかあと何人いるんだ……? ああ、クソ、なんなんだ……なんなんだよ……」

細かいところは聞き取れないが、呼び出したのはこの男性のようだ。

話を聞くべきかもしれないが、もう少し待とう。きっと、他の人が来てからの方が良い。

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1793 文咲さくら @sakura_1219

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