ヒカセン死に際小作品 (某アンソロジーの名に触発され)
西国異邦エオルゼアにおいて『光の戦士』と呼ばれた冒険者、
時は第七西暦1606年。新生ガレマール共和国に対抗し、帝政派元老や過激派政党は共和国を放逐され放浪の身にあった、ゼノス・ゾス・ガルヴァスを新皇帝として擁立し、コルヴォに新政府を樹立(ガレマール帝国を自称したが、歴史学上は都市国家ロクス・アモエヌスと呼ばれ終戦まで周辺国家の承認を得ることがなかった)。
コルヴォ人による都市国家サラパルタとロクス・アモエヌスの対立は日増しに激化していくがサラパルタは、ガレマール共和国と連携し紛争終結を試みるシタデル・ボズヤやドマをはじめとする東方連合の支援を受けず、思想的対立を深めガレマール共和国領に侵略。最先端の魔導兵器技術や古代アラグ帝国の兵器を背景にロクス・アモエヌスのみならず東方連合との紛争の火種までもを巻き起こした。この大乱は遂に当時、ウルダハやガレマール共和国の支援を受け近代化を成し遂げていたひんがしの国も看過できず、東方連合の支援を行うべく遠征軍を派遣。その中には彼女の父祖縁起の地、六ノ国へと還り齢50を超えてなお戦陣に立つ武将として名を馳せていた「女入道」、ムツラの姿もあった。
「尼六」は、ムツラが荒事巻き起こす故の外題とは裏腹に全編を通して、彼女の愛弟子・
「この星には最早 願えば救いを齎さん 神も仏もありませぬ されど強く 強く願うのです 平安を願う者のおす限りこの世の終わることは無し ここに我が魂珠を貴方に授けしは 役目を替わり請う為なるや これより 我が命死すことなかれども 私は長く生きすぎた 我が師
明朝、ナグサを集中豪雨が見舞う中ムツラは、僅か一千の精鋭を引き連れ『剛剣』ナルキソスの率いる軍勢の布陣するアイラドン渓谷を強襲、その数四千。サラパルタ軍は東方連合軍の砲爆撃に多大な犠牲を出しつつも昼夜を問わず反抗し、両軍は遂に正面衝突。ムツラの嘗ての好敵ゼノスの剣技の師匠であった老将ナルキソスもまた、衰えることなき武力にて立ち塞がり、一騎討ちは戦闘開始から三度目の豪雨に始まりまた三度の暴風雨を迎えても決着することはなかった。
チハヤと六ノ国主・
「暫く!! 暫時! お待ちなされよ!!! 今際我が身とこの者を 縛りつける物は何も無く ただ熱狂と運命の思し召しが 我を彼を ただこの者を斃すのみ 生けるも死ぬも為しうるも逝くも 何物も我らを絆しえぬ ミロク殿 ヒエン殿 ユウギリ殿 ゼノスよ チハヤよ! ただ黙してご照覧あれよ ここに 我らの生涯の終末を結ぶ いざ いざいざいざいざ 勝負!!!」
ナルキソスのコルヴォ相伝『剛剣』。名刀『
激戦の中駆けつけたユウギリ、チハヤはすでに満身創痍であったがそれ以上に、ナルキソスとともに倒れ込んだムツラは勝負があったにも関わらず残心を解かず譫言のように、「次の相手は おられるか」と呟き続ける。
「ムツラ殿 今紐をお解きします どうか力を抜き 剣を下されよ 貴殿はやはり戦い過ぎました この地上この星に 貴殿に敵う者などありはせぬのに ああ 私も貴殿も 最早老いさらばえた 私はそのお背中を追うだけといえども精一杯で こうして膝をついてしまえば足腰が立たぬ だというのに貴殿ときたら チハヤ殿強く呼び掛けよ 最早七魄を地に置いてきたようだ」
「お師匠様 お師匠様! 私たちはもう大丈夫でございます 帰りましょう もう闘われることはないのです」
ユウギリとチハヤの呼びかけに応えたのか、それすら明瞭ではない様子でムツラは独り虚空へ語る。
「ええ よく承知しておりまする これまで沢山見せていただいたのでござりますから けれどここにある人斬り大逆人 誰かが斬られねば浮かばれもせぬ もう闘えぬというのならば 苦しまぬよう斬って捨てられよ」
軍勢の見守る中最期の力を振り絞り正座する師に、チハヤは剣をゆっくりと抜く。その切先は虚空を切り裂いたのだった。
「ここに 師の中に残りし悪 我が千鳥が斬って絶ちました 最早六道七獄八苦の虚妄 迷われることはありませぬ」
その声が届いたのか、満足げな、だがどこか名残惜しげで悔悟に満ちた笑みを浮かべ三十一音を呟くと、ゆっくりと眠るが如く、女入道ムツラはその生涯を終えたという。
禍つ断て 後往く剣で 修羅道の 示す道行き 征くも還るも
この辞世の句をモモジゴは、彼女の人生における信念そのものであったと解釈すると語った。
『禍津断辰星群像』の一幕「尼六」は『
グレゴワール・ド・フォルタンによる寄稿
『無地鼓座世界巡業100周年記念公演 小冊子内解説』
Re:main/Believe (丘灯秋峯;短編集) 丘灯秋峯 @okatotokio
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