第2話
恋愛経験がないわけじゃない。
初体験は18の時、大学で初めて出会った彼だった。
その後だって、それなりにそれなりの相手と恋をしてきた。
1、2、3…それまでの経験人数は6人。
そして、最後の相手が今の夫だ。
夫…だ。
夫とは、世に言う、合コンと言うやつで、出会った。
お互い24の時に出会ってすぐ意気投合し、気づけば同棲、気づけば結婚、気づけば子供がいた。
プロポーズすら覚えていない。
世に言う、できちゃった婚。格好良く言えば、オメデタ婚をした。
なんで結婚したのか「子供ができたから…」
それ以外の理由を聞いたら「うーん。ちーちゃんといたら、楽だから」と言われた。
私も楽だ。好きな食べ物も音楽も小説も全部逆。
でも二人とも食べることが好きで、コーヒーが好きで、お酒が好きで、音楽が好きで、本を読むのが好き。
なんの不満もない。収入だって同世代からしたら良い方だもの。
いつも帰りは午前様。家にはいない。でも寂しくもない。
長身で私にはもったいないくらいのイケメンで、可愛い1歳になったばかりの息子がいて、生活には困っていなくて、不満はない。
不満はない。
正直職場は好きではない。
妊娠がわかるまで、私も証券会社の営業をしていた。
営業には向いていなかった。数字に追われて、ノルマに追われて、いいお客さんはことごとく先輩がもっていて。
毎朝来ると、「今日は一体何時に帰れるんだろう」
毎月月末になると、夕方、にこにこしてハンバーガーショップや牛丼屋さんの袋を下げた支店長が帰って来る。「今日は夕飯を食べて頑張れ」という無言の圧力。翌月の1日の予約、初日営業の予約を取れという圧力だ。
口を開けば「辞めたい」だった。
そんな中、夫との出会いはまさに渡りに船ーーーー
営業から店頭職に配置換えされ、
「育児休暇取ったら、会社に復帰して、暫くしたら辞めてしまおう」そう思っていた。
私が働く理由がみつからなかったから。
私の情熱的な性格は、行き先がなくて、さまよっていることにその時は気づいていなかった。
1歳の男の子とは実に貧弱なのであります。
実に一月に少なくとも数日お休みしなければならない。
我が子もご多聞に漏れず、呼び出しコールで早退、そしておやすみ。
バタバタとそんな日々を過ごすうちに人手が多いからと店頭職から総務課に異動となった私。
こんな半人前ですから、最初から大きな仕事なんて任せてもらえるわけもなく、最初の仕事は営業部にある大きなキャビネットの整理だった。
それを始めた頃、県内にある4つの支店が集合しそこに社長がお見えになる会議に、復帰したばかりの私も参加するようにとお声がかかる…
最後の初恋 さがの みはる @Miharu121
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