これは一体誰のシナリオだ!?



 異世界とゲートで繋がってしまった東京。

 そしてそのゲートの向こうで開催される異世界の冒険を模したRPG。アンシラリー・リアル・ロールプレイングゲーム。

 RPGのシナリオ作家である高校生・大河は、自分の趣味で自分のRPGを作りたいと、かねがね思っていた。そんなときこっそり覗きに行った異世界深奥のサード・ランドで彼は、金髪ツインテの透き通るような美人アーシェと出会う。

 彼は思わず彼女に頼み込んでしまうのであった。

「ぼくのダンジョンにキャストとして参加してください! ラスボスとして!」

「ざけんな!」

 顔面に蹴りをくらってしまう。


 というような冒頭から始まるダンジョン作りの物語。
 異世界にいき、キャストをスカウトし、着々と自分のゲーム作りを進める大河だったが……。

 本作は、パズル作りの名手にして、おかしなヒロイン(でもすごく可愛い)を作らせたら右に出る者のない作者による異世界作品。

 RPGすなわちロール・プレイング・ゲームとは、参加した者たちがその役になりきって演じる遊びだ。そこにはゲームマスターがおり、全体の話の管理をする。シナリオを作るのだ。
 だが。
──所詮人生は、誰かの書いたシナリオに過ぎない。
 ゲームのシナリオを作る大河は、、神の描いたシナリオに即して、自らのダンジョンのラスボスとの運命の出会いを果たし、自分の夢に向かって突き進むのだが……。


 異世界に繋がった世界で、異世界の住人になりきったゲームを作る。そしてそのために、異世界にキャストを探しに行く。という異世界の中に虚構の異世界をつくり、シナリオを作成するというのが本作のシナリオ。

 作者お得意の、絶対に読者に先を読ませない気概の伏線が絡まり、最高のアホヒロインはダブル。軽妙洒脱で捧腹絶倒の掛け合い。ちょっとうるっと来る話。

 これは一体だれの書いたシナリオだ? 神か作者か、はたまた大河。もしくは別の存在なのか?
 そして、これこそが本作の隠れた大テーマである気がする。
 これは誰のシナリオなのか?

 だが、たったひとつ、断言できることがある。

 それは、このシナリオに踊らされるのが、あなただということ。これだけは間違いない!

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