第26話守りたいもの

 夕食は本来、この世界においても皆で集まって食べる物である


 しかし、クレア様は人と一緒に食事をするのが苦手な為この屋敷では、自分の部屋へと料理をメイドの人が運んで来てくれる


 ...というか、この屋敷には、使用人や役人以外は俺とクレア様しかいないのである


 ...もう少しだけ、人見知りどうにか出来ませんかね?クレア様...


 まぁ、他の貴族が無理やりこの家に介入しようとしたら潰すけど...


 どうでもいいことを考えていると、キャサリンさんが部屋へと入ってきた


 コンコン


「失礼します。一応、食事を4人分追加で用意させて頂きましたが、奴隷たちの分の食事は如何しましょうか?」


「彼女達の部屋へと持っていって下さい」


 よかった...彼女達の分の食事も作ってくれていたようだ


「しかし...彼女達は食べないと思いますよ?」


 ...............え?


「どうしてですか?」


「貴方は奴隷と同じ物を食べることに抵抗がないんですか?」


 この時、この世界においての奴隷がどのようなものなのかをはっきりと教えられたのだ...


 そうか...奴隷は『物』という感覚は、当たり前なのだ...


 身分の枠組みから、外れた存在、それが奴隷なのだから...


「キャサリンさん。彼女達を僕と同じ様に扱ってくれませんか?どうかお願いします!」


 俺はキャサリンさんに頭を下げる


 せめて、屋敷の中だけでも彼女達には人として生活を送って欲しい


「そうですか...分かりました。他の者にもそう言っておきましょう。」


「ありがとうございます。それで、彼女達はどうして食べないと思うんですか?」


「それは...奴隷と同じ物を食べるのは汚らわしいという考えがあるからです。ですので基本、奴隷は主人の残した物か調理の際の余り物等を食べます。そして奴隷は罰を恐れ、食事は主人の許可をもらってからしか食べないと思います」


「そうですか...分かりました。食事はここに全部持ってきて貰ってもいいですか?」


「かしこまりました。ではすぐにお持ちいたします」


 そう言ってキャサリンさんは部屋を出ていく


 それじゃあ俺も彼女達を呼んでこよう...


 コンコン


「入るぞ」


「はい、これは御主人様。如何がされましたか?」


 下着姿のルネが、出迎えてくれた


「!?、ルネ、服!」


「?。あぁこれはお見苦しい所を。直ぐに着替えてきます」


「あ、ああ。全員着替え終わったら俺の部屋へ着てくれ」


 急いで部屋から出ていく


 やばい、ルネの下着姿が頭から離れない...


 あれが大人の魅力なのか...

 すごい...エロいな...


 って、俺は何を考えている!?

 彼女達はこれからの手駒として買ったんだ。

 決してイヤラシイことが目的で買ったわけじゃない


 部屋に戻るとすでにテーブルに食事が5人分置かれていた。


「失礼します」

 するとすぐに彼女達が部屋にやってくる

「入っていいぞ」


「入るの〜」

「あ、こら待ちなさいルカ」


 ルカが入ってきた後に他の者も続いて入ってくる


「し、失礼します」

「...入る...」

「ルネが申し訳ありません。失礼致します」


 ルネの下着姿が脳裏をよぎる

「お、おう。食事だ」


「ご飯〜」


「...ルネ待ちなさい。どうぞ御主人様お食事をなさって下さい」


 ...やはり食べ終わるのを待ってるつもりなのか...


「いや、皆で食べよう。その為に5人分の食事があるんだ」


「そんな!?...本当ですか?」


「あぁ、皆で食べた方が美味しいからな」


「...ありがとうございます。この恩は絶対に忘れません」


「いやいや、大袈裟だから...」


 たかだかご飯1食で恩にきられても困る...


「ご飯食べていいの〜?」

「い、いいんですか?」

「...本当?...」


「皆で食べよう。この屋敷の食事は美味しいぞ」


そして皆が席につく。


「それでは」

「食べるの〜」

「待て待て、食事の前の挨拶がすんでないだろ」


「挨拶ですか?」

「あいさつ〜?」

「...それなに?...」

「私、知らないです...」


もしかして、このせかいには食事の挨拶の習慣がないのか?

ていうか、この世界で俺初めてほかの人と食事してるんじゃ...


「挨拶ってのはこの食材に感謝をするってことだ。俺の国では『いただきます』っていってた」


「食材に感謝を、ですか。御主人様の住んでいた国では高い慈愛に溢れていたのでしょうね」


...確かに日本は世界の中で最も『和』の文化を重要視しているが...慈愛とは違うような


「まぁ、いい国だよ。話がそれたね。食事にしよう」


「いたます〜」

「...いただきます...」

「い、いただまきす...」

「いただきます」


.....2人ほど間違えているがこういうのは

言葉よりも気持ちだろうからいいだろう


「肉〜おいし〜」


「...このスープ温かい...」


「この魚には、胡椒が使われているのですね。とても美味しいです。」


「こんな美味しいものがあったんですね...」


皆、料理を美味しく感じてくれているようだ


「ルネ姉の肉もらう〜」


「...このキノコ嫌い...サラちゃんあげる...」


「ルカ、行儀が悪いですよ。それにルナ。

サラちゃんに嫌いな物押し付けない。サラちゃんもこういうのはしっかり断って」


「は、はい。すみません...」


...こんなに賑やかな食事はいつ以来だろう...


あぁ、だめだ...こんなのずるい...


「ご主人〜。何で泣いてるの〜?どっか痛いの〜?」


「御主人様どうされましたか?」


「...いや、大丈夫だよ、ありがとうルカ、ルネ。ほらこの肉やるよ」


「やった〜。ご主人ありがと〜」




俺はこの世界で生きるんだ

この日常を守るためにも




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魔女の眷属 @background

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