天邪鬼の帰る場所

作者 橘 月

27

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★★★ Excellent!!!

真実におそろしいのは妖か、人か。
真実に愚かしいのはこどもか、おとなか。

各地を旅する薬師と山彦鳥が出逢ったのは「天邪鬼」と噂される幼い娘だった。娘は嘘ばかりをつき、度々村人をこまらせているそうだ。そんな「天邪鬼」の娘は薬師にある言葉を言い残す。

「この村の人間の言うことを信じるな。
さもないと、あんた達、生きてこの村出られないよ」

果たしてそれは真実か、嘘か。
天邪鬼の娘の真実、村に隠された人の業とは……そのすべてを解き明かしたときに、薬師はどのような決断を下すのか。

登場人物ひとりひとりの喜怒哀楽を見事に書ききった、素晴らしい小説です。複雑に絡んだ複数の謎が、様々な人物の心の動きにともなって、ひとつひとつあきらかになっていくところはまさに圧巻の一言でした。これほどありありと人の感情を書いた小説はそうそう、出逢えるものではありません。優しさと愚かさ、弱さと強さが綯交ぜになった《こども》と《おとな》の心からの叫びに、頁をめくる度に胸を揺さぶられました。

人は愚かで、世は無常。
人は無情で、世は憂き。
けれど、それだけではないのだと。
それだけであるはずもないのだと。

この物語が教えてくれます。

是非、ひとりでも多くの御方に読んで頂きたいと思います。

★★★ Excellent!!!

旅する薬師の深(しん)と、人語を話す鳥・縁(えにし)の一人と一匹が出会ったのは、与依(よい)という少女。
彼女は村人たちから「天邪鬼」と避けられていて……。

という出会いから始まる物語。
話が進むにつれ、村に隠された秘密が、さらに読者を物語に引きこんでいき……、と見事な流れになっています。

登場人物達もみな魅力的なのですが、なんと言っても、鳥の縁が可愛いです。
強がりで、意地っ張りで……。読んでいて微笑ましいです。

縁の次に好きなのが歴。
真っ直ぐな彼の存在が、この物語が語られ終った後、きっと素敵な未来を切り開いていってくれるんだろうという希望になりました。

★★ Very Good!!

社会全体の間違いが悲劇を生む悲しさは、現実世界のことを思い起こされて、身につまされる思いです。

人物の設定がとても練られており、一人一人のドラマと人間性が胸を打ちます。

美麗な描写に確かな心情の吐露も混ぜられた、とても完成度の高い物語だと感じました。

愚かさの犠牲は、罪もない少女に被せられる。ああ胸糞が悪いですが、だからこそよかったと思える結末。ええ、見て損はしないでしょう。

本題ですけど、縁が超可愛い。

★★★ Excellent!!!

訳アリの薬師「深」は、お喋りする鳥の「縁」を相棒に、旅をする日々を送っている。
山の中迷った彼が出逢ったのは、「与依」という嘘ばかり吐くという少女で――。

天邪鬼に憑かれた少女与依を、同じく妖に憑かれた薬師深が助ける。
キャッチコピーやあらすじどおりの、爽やかな物語ですが、物語はそれだけに留まりません。

嘘吐きな与依を忌避する村人、彼女を気にかける幼馴染の少年。
各々に事情があり、それらが複雑に絡まり合って、やがて物語は彼らの過去にまで遡っていきます。

哀しく切ない複雑な事情の先にあるのは、綺麗にまとまった結末。
読後にこのタイトルを見ると、なんだか感慨深いものが湧いてきます。
全8章24話と、とても読みやすい構成になっています。
落ち着いた和風ファンタジーが好きな方、是非読んでください。

★★★ Excellent!!!

大人たちが罪を犯し、大人たちが隠蔽し、大人たちが……。
そんな村にたどり着いた薬師の深と、山彦鳥と呼ばれる喋る鳥の緑。
天邪鬼に取りつかれた問題児の与依を理解しようと進んで動く姿や、与依のどうにもならない胸のうちなど、とても深く心に響きました。
そして、次々と明かされていく村の真実に、胸が苦しくなります。
どうして大人ってこんなにも汚くて、狡くて、事なかれ主義でいられるのか。
腹立たしいものを感じましたが、殺して終わりじゃない結末がすごく良かったです。

子供の世界と大人の世界、この二層がうまく融合していて、大人でも子供でも楽しめる質の高いファンタジー小説です。
もっと評価されても良い作品だと思います。