振り返ってはいけないよ……異世界怪奇譚。

帝都から都市トリアナンに左遷された法務官ベイル・マーカス。
彼の趣味は、怪談を蒐集すること。
トリアナンで有名な『人形の祠』についての調査を始めるが。

魔法もアンデッドも存在する世界観ですが。
この世界の理屈で説明できるアンデッドとは、幽霊は全く別。
説明のつかぬ、恐ろしいもの。

幽霊を信じ、嬉々として人々に話を聞くベイルは、変人の域。
けれども、個々の事象に対する態度は、現実的で冷静。
見間違いかもしれない。病気や、ごまかしかもしれない。
盲目的に怪異だと信じるのではなく、選り分けて、本物を求める。

世襲で騎士になれる家柄で専門は法務、武芸の腕はないベイルへの。
努力して騎士にならねばならない者のやっかみと侮りや。
領主と教会の関係や、トリアナンの歴史。
怪談の周囲にある現実の問題も、非常に説得力があります。

夜の変な時間に読み始めてしまい、そのままやめられず一気読みでした。
レビュー前に再読しましたが、二巡目でもとても面白かったです。

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